一部
出逢い
私、お金で売られる?
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タイ、バンコクのとある会社のオフィスにて。
肌を真っ黒に焼きつぶしたアジア系の筋肉質な男と、耳にピアスをつけたイタリア系の金髪の男が机を挟んで取引の真っ先中だった。
金髪の男は、にこやかな、ともすると胡散臭さ満載の、笑顔を顔に張り付けて喋っている。アジア系は緊張している様子で時折ハンカチを取り出しては汗を拭きとっていた。
ここからでは話の内容までは読み取る事はできなかった。
「っま、どーせ碌な話じゃない」
私は誰ともなしに呟いた。勿論、それに答える者はいない。
「ってか、普通の商談な訳ないよねー。だって護衛もガンガンにつけてるし、狙撃主だって一人、二人、三人…六人もいるんだもん」
また、呟いた。ま、今のは愚痴に近いんだけど。
「でも、まあ…ね、出来ない仕事でもないし。楽ではないが、無理ではないってね」
私は勝利宣言をした。そう、今から私、人を殺します。
「そろそろですねえ、お決め頂かないと。こちらも時間が無限にあるという訳ではないんですよ」
目の前に座る男がにやにやと人の好い笑顔で脅してきた。
「どこがご不満なんです? 最新のレーダーに、米国製の拳銃五十。マシンガンが三十、これで占めてこの値段です。お得だと思うんですがね」
俺が話してる、この気に入らないイタリア男はキスマーニ・ロッペン。その界隈では有名な武器商人らしいが…。
「人の足元見やがってえ…」
「ん? 何かおっしゃりましたか?」
「い、いや、何でもありません。す、すみませんが、もう少しだけ時間を…」
「そう無駄に時間を使ってもられないんですよ、ウチは。アンタらみたいに暇じゃないんだから」
何だと!! とウチの社員が叫んだ。ロッペンの護衛が銃に手をかけるのが見えたので、俺は社員をなだめる。
「やめろ!! …すいません、ウチの社員が」
「アハハ、いいんですよ。別に気にしてませんから」
ロッペンはへらへらとした表情を変えないで言った。クソ! どこまでも気に入らない野郎だ。
でも、俺たちはコイツに頼る他なくなっていた。俺たちの会社はいわゆる不動産。土地を扱っていて、マフィアとの繋がりも深い。というか、そもそも俺たちだってマフィアだった。それが独立して、事業も順調に業績を伸ばしてこれからって時に、部下の一人がヘマをこいた。タイの裏社会を操るマフィア、ギガルファミリーと土地の所有権でもめやがったのだ。しかも、話が上手くいかなかったらしく、逆上して先方を殴り殺してしまった。血気盛んなウチの社員でも一番のガキンチョだったヤツだが…。全く厄介な事をしてくれた。そいつは三日も経たない内に物も言わない死体となってウチの会社に送りつけられてきた。そして、それ以来というもの
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