マザーズ・ロザリオ編
終章・全ては大切な者たちのために
BANQUET
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ている長身サラマンダーをジト目で睨み付け、ため息を吐く。
SAOではノリでボス攻略なんてことは正気の沙汰でないとかそのれべるではなく、死にたがりの所業だった。それを考えるとこの展開は旧SAO組にとってはかなりの違和感をもたらすが、間違いなくこれはゲームだ。
しかし今までの俺はボス戦に参加する際、どうしてもそれを忘れられなかった。頭のどこかでゲーム中の『死』を忌避してしまう。レイドメンバーがエンドフレイムに変わると足が鋤くんでしまうのだ……
だが、今日は違う。
「頑張ろうね!」
「おう。ちゃんと指示聞いて動くんだぞ?」
「わかってるよ〜!」
ぷくぅ、と膨れるユウキの頭を優しく撫でると準備を始める。
防具を最近戦闘用に使っている防御力の高いマントに代え、ここまでのメインアームに使っていた《蜻蛉》を剣帯に取り付ける。さらにアクセサリーの項目を変更。
すると黒い帯が出現し、腰回りでひらひらしているマントを固定する。最後に大太刀を背負う。一度抜いて刃を調べるが、耐久力はまだ十分なようだ。
「ん?その巻いてあるやつ何だ?」
目敏く俺の新しいアクセサリーを発見したキリトが訝しげに訊ねる。
「秘密だ」
だが、教える訳にはいかない。この黒い帯はこのようにマントを留めておくという役割の他に最近習得した新たな技にも使用するからだ。
恐らく、近々開催される東西統一デュエル大会で剣を交える事になるキリトには手の内を晒したくはない。
「ま……そうか」
キリトも同じ事を考えたらしく、真面目な表情になって俺を見る。
意外なことかもしれないが、SAO時代に俺は一度もキリトと剣を交えた事はない。
後にアスナに聞いた話では攻略組の中では密かにそれが話題になっていたそうだ。すなわち《最強の剣士》は誰か、と。
挙がっていた名前はヒースクリフを筆頭にキリトやアスナ、オラトリオ幹部陣、そして俺が挙がっていたそうだが……中でも《黒の剣士》、《紅き死神》は攻撃特化のソロプレイヤーで戦闘スタイルが多くの点で対比していたため、盛んに噂されていたそうだ。
しかし、それももうすぐハッキリとする。
この時、レイは馴染みの無い感覚に囚われていた。身の回りの人間は自分より遥かに強いか弱いかしか居ない世界で生きてきた彼はこの時初めて《対等》と言える人物に会ったのかもしれない。
そこから生まれるものは『負けたくない』という純粋な渇望、勝利への欲求だった。
「楽しみだな」
「ああ」
再び数秒の睨み合い。
敵意ではなく、闘志を交わすためのもの。
それが終わると2人は同時に笑みを浮かべ、ボス戦の健闘を誓うとそれぞれのパーティーの元へ向かった。
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