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弱者の足掻き
五話 「才能の差」
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いので助かった。

「それじゃ宿探すとするぞ。一人限界の奴がいるし。いや、乗ってもいいんだがね俺としては」

殺す気か己は。
だが結構ヤバいので休むというのは有り難い。

「この調子だと、着くのに大体後三日か四日。早くても二日ってとこだなこりゃ。ま、しょうがねぇか」

……面目ない。

「大丈夫ですかイツキさん」
「ああ、もう大丈夫だ。気分も良くなってきた。……白は大丈夫なのか?」
「はい。心配してくれてありがとうございます」

こちらの言葉に柔らかく白が微笑む。
自分より年下の白が一切問題ないのに、自分はこの体たらく。
ああ、その笑顔がまぶしい。

「何してるお前ら、さっさと動け。明日早くから乗るんだ、早いとこ見つけねぇと村見る時間が無くなんだろ」
「村回るんですかおっさ……イオリさん」

危ない危ない、つい言ってしまうところだった。

「言い直せてるつもりかオイ。……まあいい、変に仰々しく取り繕ってんのよりましだ。好きにおっさんとでも言え。代わりにこっちはお前のこと呼ぶときはクソガキとでも呼んでやらぁ。わかったかガキ」
「わかりましたよおっさん」

精一杯皮肉らしく言ってやる。
そんな横で白が少し困った顔をしているがそれでいい。
白、お前はこんな風にならずにまっすぐ育てよ。それこそ原作位純情に。
そうでなきゃ使えないからさ。

「で、だ。村は回る。何せ島には色々変な風習があるらしくてな。そりゃあオメェ、面白そうなもんがありそうだろうが。値打ちの物があるかもしれねぇだろ」
「あー、そう言えばそんなこと聞いたことがありますね」

遠出したことがないので聞いたことがあるどまりだったが。
なんでも、本島を隔てた大小の島にはそれぞれ異なる風習があるとか。

「そんなわけだからさっさと行くぞ。ボケっとしてんな」
「はーい」

まあ、面白そうだから行くとするか。



そうしてイツキと白は前を歩くイオリの元へと小走りで駆けて行った。
何があるのか、少しながらの楽しみを胸に。
そんな中彼ら。否、イツキは忘れてしまった。

翌日に、長い船旅があるということを。










「あ〜……そういやなんだったか」
「何がですか」
「あれだ、何か買おうと思ってたはずなんだが、何だったか……」
「忘れてるんなら大したもんじゃないんじゃないですか」
「ま、それもそうだな」

そしてイオリも酔い止めを忘れていた。
地獄を見るまであと一日。彼らは、気づくことが出来るのか。

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