五話 「才能の差」
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に視線を移しながら、嘆くように言った。
「自分がこんなに???船酔い、するなんて……ぅぷ」
視界に広がる広大な海を眺めながら、その言葉はどうしようもなく気力がなかった。
水の国は四方を海に囲まれた島国である。
そして目指す波の国は木の葉隠れがある火の国の南方。必然的に海を移動しなければならない。
そのための船の上にいるのが今現在である。
だがしかし、規定事項でわかっていたはずのことであったのだが一つ、予期しない事態がイツキを襲った。
それが、本人さえ知らなかった船酔いである。
正直、最初は大したことがないと思っていた。
この世界では初めての水面に浮かぶ揺れる地面。
自分たち三人に、船頭である元気のよさそうなおじさんを入れて四人が乗ってまだ余裕のある、少し大きめな木でできた船。
海を進む船に揺られ、最初に異常を感じたのは乗って二十分ほどたってから。
船の揺れの様に、体の中で揺れるような感覚があった。
どこか収まりがつかないような、いつもなら平らなものが少し斜めになったままのような奇妙な感覚。
いつもなら普通に感じられ、実感を持つというのも不思議だと思える様に普通に見えていた景色が普通に見えなくなった。
自分で見ているのには違いないのに、どこか客観的と言うか、一歩離れているところから見ているような見え方。
自分で見ているのに、“見ている自分”、を通してみているような景色。
そして、それを明らかにおかしいと思った時にはもう遅かった。
喉元の奥に何かがあるかのような感覚に、脳がマヒしているような浮ついた倦怠感。
揺れる床に合わせる様に揺れる頭の中と動く胃に、思わず口元に手を持っていった。
そしてやっと気づいたのである。
自分が、前世でも経験したことのない船酔いになったk??あ、無理。
「うあ、あ、……うう……んぐ。はあ……はあ……」
「お客さん、頼みますから吐くのなら船の外にして下さいよ。掃除するの大変なんですから」
「そうしろよ。間違ってもこっち向いて吐くな」
殴りたい。
船を動かしてる船頭のおじさんは分かる。商売道具だし、自分の船だろうからそれは当然の言葉だろう。
だがおっさん、テメーは駄目だ。仮にでも保護者なんだから少しは心配しろ。
いや、俺も多分こっち向くなって言いそうだけどね。
(……今は遠き前世の友人Aよ。あの時は軽く見てゴメン。正直これかなりきついわ。もう馬鹿にしない)
乗り物に弱かったAよ。もしまた会う機会があったら、土下座して謝ってもいいとすら今は思ってる。
「……すまん白。水くれ」
「はい、どうぞ。……大丈夫ですか?」
「……正直ヤバい。船酔い舐めてた」
「……」
そう言うと、白は無言で背中をさすってくれた。一体どれくらい
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