第二章 [ 神 鳴 ]
十五話 娘
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目の前の鍋には紫色の汁の様な物がグツグツと煮えていた。どうしたらと言うか何を使ったらこの色を出せたんだろう?それに何故こんなに煮立っているのに匂いがしない?僕は紫が作ったと言う汁を観察しながらそんな疑問を頭の中で浮かべていた。
まぁこれはあれだ、見た目は酷いが実は美味しいというあれ。…猛毒であろうと死ぬ事はないし。
「それじゃ、いただきます」
汁をお椀に注ぎそして口へと運ぶ。紫は期待に満ちた瞳で僕を見ていた。そして僕の口から出たのは、
「!?!?これはすごいよ紫!すごく不味い!何と言うか他に言葉が見つからないや!」
僕の発言を聞いて紫は怒りを露にした。
「何よ!お父様の馬鹿!もっと他に言い方があるんじゃないの!」
「ごめんごめん。とりあえず紫も食べてごらん」
そう言って紫のお椀に汁を注ぐ。
「ふんだ!もうお父様にご飯なんて作ってあげないんだから!」
あ〜あ、へそ曲げちゃった。紫は僕に文句を言いつつ汁を口に運んだ。そして、
「うわ!すごい!すごく不味い!………ごめんなさ〜〜〜〜〜〜い!!!」
泣き出してしまった。でもこうやって自分の失敗を自覚しないと成長できないからね。
「はははッ!ちょっと待っててね」
紫にそう言い残し僕は台所に向かい残っている物で簡単な料理を作る。完成したそれを紫に渡し食事を再開する。
「紫はそれを食べなさい」
「…お父様はどうするの?」
「僕はこれを食べるよ。食べ物は粗末にできないし、それに折角紫が僕の為に作ってくれた物だしね」
「お父様…」
「今度からは一緒に作ろうか。きちんと教えてあげるから」
僕がそう言うと紫は、
「うん!!」
笑顔で何度も頷いていた。その後はいつも通りのたのしい時間が流れた。
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縁側に座り僕は夜空に浮かぶ月を見ながら心の中で今日あった出来事を報告する。何千、何万、何億と繰り返してきた僕の日課だ。あの子達との繋がりを少しでも持ちたくて始めた意味なんて無いただの気休め。
そんな風に月を見上げている僕の膝の上で白色の寝巻きに着替えた紫が寝息を立てていた。起こさない様に優しく髪を撫でる。
「もう5年かー、早いな」
紫の髪を撫でながらあの時の事を思い出していた。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
5年前、偶然立ち寄ったこの村である妖怪を退治してほしいと頼まれたのが始まりだった。この辺りには岩さんを含め何人か神がいるけど彼らは土地神と言って戦いの神ではない。
土地神は基本、耕作や豊穣を司る為災いを退ける
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