第二十六章
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第二十六章
「ですが」
「ですが?」
「せめて他の存在になりたいですね」
「ふむ」
速水はアンジェレッタのそれを聞いてまた考え込んだ。
「難しいですね」
「日本にはそうした魔物はありませんか」
速水に問うてみる。
「これといっては」
「では悪魔になりましょうか」
「悪魔に」
「死神を追うのならば同じ魔性のものに。いえ」
だが考えがここで変わった。微妙にではあるが。
「それよりも」
「それよりも?」
「より妖しく美しい存在をイメージしました」
「それは一体」
「堕天使です」
その整った唇が妖艶に笑った。それは速水が知っている女性のそれに似ていた。それを見て思うところはあったが口には出さなかった。
「堕天使ですか」
「これなら何か受け入れやすいです」
「貴女としては」
「貴方はどうですか?」
「それでは私もまた」
それに頷いてまたカードを引いた。そこにあるのは審判の逆であった。ラッパを吹く天使が逆になっている。そう、天使が逆になっているのだ。
「これでよいですね」
「では堕天使はローマへ降り立ちますか」
「そうですね。それでは」
「はい」
二人は食事を終えるとローマに出た。これといった場所へ足を運んでいく。
まずはイタリア広場であった。ローマの休日で有名なあの場所である。オードリー=ヘップバーンもこの地で遊んでいる。残念ながら今は美貌のお姫様はここにはいないが。
「流石にここには妖気の跡はありませんね」
「ええ」
アンジェレッタは速水の言葉に応えた。
「確かに」
「駅や泉にはかなり強いものが残っていましたが」
「そうですね、彼女の妖気はかなり強い」
それは写真からもはっきりとわかった。
「ですがここにはない」
言ったことろで速水はふと気付いた。右目、そして左目が動き、輝く。とりわけ左目は髪の毛の奥で何かをしきりに警戒していた。
「待って下さい」
「どうされました?」
「いえ、妖気です」
速水は周囲を警戒しながら述べる。その目はもう笑ってはいない。
「妖気がどうされましたか?」
「彼女は恐ろしいまでの妖気を持っていますね」
これはさっき述べたばかりだ。
「それです」
「それが手懸かりに!?」
「はい、まずはローマを調べましょう」
彼は言った。
「もう一度ね」
「もう一度ですか」
「突き当たったらまた調べてみるのもよいことですよね」
ここでアンジェレッタに対して言う。捜査の鉄則だ。
「そうですね。しかし」
「もう調べ尽くしたと」
「私はこの街にいる者ですので」
アンジェレッタは述べる。
「自負もあります」
「しかし」
それでも速水は言う。まるで話を導いていくかの様にである。
「それでも思い直されてはどうで
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