第一話
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大丈夫なの?」
「よ、吉井君!?あの、その……はい、もう大丈夫です。あの時はありがとうございました」
明久の顔を見て驚く姫路。隣に座っておきながら誰か分かっていなかった様だ。
「そっか。よかった、心配だったんだ」
「は、はい。本当にありがとうございました」
「あはは、いいよそんなに言わなくても。こっちがどうすればいいか分からなくなっちゃうよ」
何と言うか、思いのほか仲良くなっている。これがほぼ初対面のはずだが、あの時の出来事は結構姫路の中で好印象につながっているようだ。
「雄二、この二人は今日初対面と言ってもいいはずだよねぇ?」
「ああ、その割には仲がいいみたいだけどな。それに気づいてるか?島田がさっきからこっちを見てるぞ」
小声で言葉を交わし、島田の方を見てみる。
すると目があった。何か言いたそうな顔をしているが、残念、そこからでは少し遠い。仲良さ気に話している二人を見ているしかない。あぁ可哀そうな島田美波。その嫉妬や怒りが明久への暴力として表に出ない事を、切に願おう。恋のアドバイザーとして、何の変化も得られないと言うのは、なかなか退屈なのだ。
俺はそう思いながら島田に、小学生のころから「イラッとくる」と言われ続けている笑顔を向けてやる。
案の定睨みつけてくる島田。少し唸り声が聞こえてくる。ま、だからどうということもないのだが。
「ちょっとそこ、うるさいですよ」
福原教諭が教卓をバンバンと叩き注意した。
すると教卓は音を立てて崩れ去る。Fクラスの設備のひどさがまた浮き彫りになった瞬間だった。俺の後ろにいる姫路も苦笑いをしている。
「替えの教卓を持ってくるので少し待っていてください」
そう告げると、福原教諭は教室から出て行った。そして広がる生徒たちの喋り声。「さっきの自己紹介はどうだった」という言葉や、「女子が全然いないよー!」という不満などの、どうでもいい事が聞こえてきた。
「……雄二、直人、ちょっといいかな?」
そうやって周りを見ていると、明久に声を掛けられた。
「どうしたんだい?」
「ん?なんだ?」
振り向く俺と、あくび交じりに答える雄二。
「ここじゃ話しにくいから廊下でいい?」
「別に構わんが」
「面白い話が聞けそうだねぇ」
三人で立ち上がって廊下に出る。
「それで?話って何だい?」
明久は一度周りを確認してから話しだした。
「実はこの教室についてなんだけど……」
「Fクラスか。想像以上に酷いもんだな」
「雄二もそう思うよね。直人は?」
「この教室を見て良い環境だと言える人間は、相当の修羅場をくぐって来ている人間だと思うねぇ」
「お前は分かってたんじゃないのか?」
「一応話には聞いていた
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