第一話
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リン』って呼んでくださいねっ」
明久は教室に入ってきた時と同じように、明るくおどけた感じで言った。
瞬間――。
『ダァァーリィィーンッ!』
教室内にいる生徒の大半を占める男子の、野太い声の大合唱である。
それを聞いた明久は一瞬戸惑ったものの愛想笑いで返し、その後普通に挨拶をし座った。心なしか顔色が悪い。
「どうしたんだい?少し顔色が悪いようだけど」
「ああうん……まさか本当に呼んでくるとは思わなかったからね……あはは……はあ」
あの大合唱は結構ダメージを受けたようだ。
そしてその後、なんの面白みもない没個性で退屈な自己紹介が進み、そろそろ終わりかなと思ったところで、教室のドアが開かれた。
走ってきたのだろうか、息を切らせ上気したように赤くなった顔で、胸に手を当てている女子生徒――姫路瑞希が入ってきた。
「あの、遅れて、すいま、せん……」
そう言った彼女を見て、誰からともなく驚いたような疑問の声が上がった。理由を知らない奴らにとっては当然だろう。姫路瑞希は実力で言えばAクラスにも引けを取らない。なぜFクラスに?と思うものだ。
そんな中俺は、鞄から小学生の時から愛用しているペンと、もうこれで何百冊目かと言うメモ帳を取り出す。
そして「姫路瑞希 Fクラス」と書いておく。こんなことに意味はないが、一応この学園の生徒全員分の情報を書いているのだ。一人だけ書かないと言うのもおかしい。本当だったらもっと早く書いておきたかったが、彼女についての情報は得ることが難しかった。Fクラスだとは思っていたが。
そんな事をしていると、彼女は福原教諭に促され壇上にあがり、自己紹介をしていた。その時にこのクラスになった理由――熱を出してしまった事も説明している。それを聞いた馬鹿たちは「熱の問題が出たせいでFクラスに」「科学だろ?アレは難しかったな」などと言っている。
その後自己紹介を終えた姫路は、足早に明久の隣、つまりは俺の後ろに座った。
そして「緊張しました〜……」と安堵のため息を漏らしている。壇上での自己紹介は、恥ずかしがり屋の気がある姫路には結構つらかったのだろう。
隣の明久は何か考えている。。
せっかくだ、一度自己紹介でもしておこうか。
「やあ姫路さん。自己紹介お疲れ様。俺の名前は氷川直人。よろしく」
「あ、えっと、はい。よろしくお願いします」
いきなり話しかけられ、戸惑いながらも深々と頭を下げて言う姫路。やはりFクラスに似つかわしくない礼義正しさだ。
と、次に雄二も俺と同じように自己紹介をした。姫路もまた同じようにやっている。
そしてやっとかと言うように明久が声を出した。
「あ、あの姫路さん!僕は吉井明久って言うんだ。よろしくね。それと……もう体調は
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