第一話
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ちで、日本語は出来るけど読み書きが苦手です。あ、でも英語も苦手です。育ちはドイツだったので。趣味は――」
そこで島田は少し考えるように間を開けた。
趣味と言うと嫌な予感しかしないので、今後のためにも俺から一応の注意をしておく。
「島田。明久を殴る事なんて言ったら、君の願いはどんどん遠ざかっていく事だろうねぇ」
「げっ、居たの氷川」
俺を見つけた島田は嫌そうな顔をしてこちらを見た。
「げっ、っていうのは酷いんじゃあないかい?淑女としてもいただけない発言だねぇ。それにこれでも君のアドバイザーをしているんだよ?まあ、結果は全く出ていないけど。それもこれも君が俺のアドバイスを聞かないからだけどねぇ」
「うぐぐ……」
島田は悔しそうに唸りながら、結局何も言わずに座った。
俺がしたアドバイスは二つ。
『安易に暴力に走るな』と『素直になれ』だ。一向にそうなる気配はない。恋が実るのはまだまだ先のようだ。
「アドバイスって何?」
不意に後ろから声を掛けられた。明久だ。
「何でもないさ。君が気にする事じゃあない」
「そう?」
明久は納得がいかないと言った顔をしているが、それ以上の追及はしてこなかった。
と、そんな事を話していると俺の前の生徒の自己紹介も終わり、俺の番となった。制服を正して立ち上がる。
「氷川直人。趣味は……人間観察とでも言っておこうか。しがない情報屋をやっているよ。何か知りたい事があったら俺のところに来るといい。俺が不利益を被る事がないような情報だったら教えてあげよう」
そして俺はあと何か言うことはあるかなと、一度考えこう付け足した。
「情報料については応相談だから、そこのところはよろしく。逆に何か情報を売ってくれるって言うなら、相応の値段で買おう。では、これから一年間共に学園生活を有意義なものとしようじゃあないか」
言い終わった俺は軽く頭を下げ礼をし、また綿のない座布団に座った。そして耳を澄ませて周りの会話を聞く。すると、ひそひそと何か呟いている二人の男子生徒の声が聞こえてきた。
「お、おい。氷川ってあの氷川か?嫌いな奴ならどんな奴だろうと、自分の持ってる力を全部使って本気で潰しに来るっていう……」
「ああ……間違いない。情報屋と言うだけあってあいつの情報網は異常と言っていいほどに恐ろしい……下手な真似はするなよ?俺まで巻き込まれたら最悪だ……」
どうやら会話の内容から察するに、俺の事は結構知っている奴が多いようだ。これなら俺が何かされて、騒動の中心になる事もないだろう。俺は傍から見て楽しみたいのであって、当事者になりたいわけではないのだから。
そして次に明久の番となった。
「えーと、吉井明久です。気軽に『ダー
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