第一話
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た」
「うーっす」
三者三様の返事をして適当な席に着く。席と言っても、畳の上に座布団と卓袱台があるだけだが。
そして俺達が座ったのを見届けると、福原教諭はゆっくりと話し始めた。
「えー、皆さんおはようございます。二年F組担任の福原慎です。よろしくお願いします」
そう言いチョークを使い黒板に名前を書こうと動いたのかと思ったら、直ぐにやめた。先ほどちらっと見たが、チョークが用意されていなかったからだろう。
「全員に卓袱台と座布団は支給されていますか?不備があれば申し出て下さい」
総勢五十名程度の生徒たちが学校で皆座布団に座っていると言うのも、なんとも奇妙な光景だ。
「せんせー、俺の座布団に綿がほとんど入ってないっす」
クラスメイトの誰かがそう言った。
「あーはい。我慢してください」
それを皮切りにどんどん出てくる不備の申し出。
「先生、俺の卓袱台の脚が折れているんですが」
「木工ボンドが支給されていますので、後で自分で直してください」
「窓が割れてて風が入ってきてるんですけど……」
「分かりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきましょう」
俺の思っていたよりも、Fクラスというのは酷いものだったらしい。壁はひび割れ、隅にはクモの巣まである。おまけに畳は腐っていた。
「必要なものがあれば極力自分で調達するようにしてください」
そこで一度言葉を切った福原教諭。教室内に何ともいえない微妙な空気が流れている。
「では、自己紹介でも始めましょうか。そうですね。廊下側の人からお願いします」
教諭の指名を受けて、輪のように内側を向いて並んでいた生徒の一人が立ち上がる。
「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる」
立ち上がった生徒は、去年のクラスメイトで、俺がよく話す事があった生徒だ。女の様に整った顔立ちと小柄な体格などから、他の奴に女扱いされている男子生徒である。女扱いしない俺には感謝していると前に言われた事がある。
というか今になって周りを良く見てみたが、俺の知っている人間が多い。というよりも、俺が好んで付き合っていた人間がそう言う奴ばかりと言うことか。
そしていつの間にか自己紹介を終えて座った秀吉に代わり、その後ろの生徒が立ち上がった。
「…………土屋康太」
相変わらずの口数の少なさでそう言った男もまた、去年の俺のクラスメイトの一人であり、俺の仕事仲間とも言うべき人間だ。奴には証拠を集めてもらう事があったり、逆に俺が仕事を手伝ったりと、奴の見た目に寄らずの運動神経の良さから、色々と一緒にやっていた。
そして次に立ったのはこのクラスには珍しい女子生徒だった。少々粗野な奴だが。
「島田美波です。海外育
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