第一話
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同時に言い放つ。それを訊いた明久はいきなりの事で固まっていた。無理もない。
「……雄二と直人、二人とも何やってんの?」
教壇に立っているのが不思議なのだろう。そう言えば俺も訊いていなかった。
「先生が遅れているらしいから、代わりに教壇に上がってみた」
「先生の代わりって、雄二が?直人じゃなくて?」
「一応このクラスの最高成績者だからな。俺の隣のこいつが適当にやったからだろうが」
雄二がそう言うと、二人の視線が集まった。理由を言えと言うことらしい。
「だってつまらないじゃないか。良い成績とったってそれじゃあ意味がない。だから解答の代わりに俺の持っていた情報を書いておいてあげたんだよ。試験の時、熱で途中退席になってしまった姫路瑞希を君は助けただろう?と言っても保健室に運んだくらいだけどねぇ」
「それがどうしたの?」
「その時色々と言っていた教諭が居たじゃないか」
「ああ、確かにいたな。途中退席は無得点扱いだとか何とか」
「そう、その教諭だ。奴の事は前々から嫌いだったからさ、仕事上ああ言わなくちゃいけないのは分かるけど、俺だって人間だ。嫌いなものは嫌いなんだよ。だから書いておいたのさ。証拠も付けて」
「「何を?」」
二人の重なった声を訊き、一拍おいてから答える。
「汚職だよ。簡単に言ってしまえば、他の人間から賄賂を受け取っていたんだ。うちの子を上のクラスにしてくれって言われていたよ。丁度そこに居合わせる事が出来てねぇ。写真も撮らせてもらったし、音声の録音もさせてもらった。面白いくらいに上手くいったよ。で、その事を書いておいたのさ。それをどうするかは、学園長次第と言ったところかな。く、くくっ、あはははっ!」
おっと、思わず笑いが出てしまった。二人は俺の事を若干引いてみている。別にどうでもいいが。
そして雄二は気を取り直すように言った。
「まあとりあえず。このクラスの全員が俺の兵隊だと言うわけだ」
「俺は違うけどね」
ふんぞり返って床に座っている他の生徒を見下ろし、にやついている雄二に一言言っておく。人の下につく事は、俺が最も嫌う事だ。仕事ならばやぶさかではないが。
そんな雄二を見て明久は呆れている。そして教室を見回し更に深い溜息を吐いた。そう、先ほども床に座っていると言ったが、ここには椅子がないのだ。明久は「……さすがはFクラスだね」と呟き、空いているスペースを探そうとしている。
「えーと、ちょっと通してくれますか?」
すると後ろから声を掛けられた。振り向くと、ヨレたシャツを着た老年の男――福原教諭が立っていた。おそらくは担任なのだろう。
「もうHRを始めますか?」
「ええ。ですので席についてもらえますか?」
「了解です」
「はい、分かりまし
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