第一話
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「……お前が言うのだから事実なんだろうな」
「当たり前です。俺のモットーは脚色誇張一切なしの、真実を伝える事ですから。まあ、相手にもよりますがね」
西村教諭との朝の会話も終わり、今俺はコツコツと音を立てながら、俺のクラス――二年F組の教室を目指し廊下を歩いている。
三階に足を踏み入れてすぐ目に入ったAクラスの大きさは、聞いていたよりも広く感じられた。そしてその設備もまた豪華なものだった。やはり、百聞は一見に如かず。自分で見なければ本当の事は分からない。
また、どのクラスでもそこそこ人は集まっているようだ。いつもより早く来たが、他の奴も同じような感じらしい。進級して浮足立っているとでも言うのだろうか。
そうやって周りを観察しながら歩いていると、二年F組と書かれたプレートがある教室の前まで来た。
――さて。最底辺クラスにはどれくらいいるのやら。
俺は軽く扉をコンコンとノックし開いた。
「やあ、最底辺クラスの我がクラスメイト達。これから一年間よろしく」
「しょっぱなからケンカ売ってんじゃねえよ、直人」
俺の挨拶にいち早く反応したのは、教壇に立っている大男。野性味あふれるゴリラの様な俺の友人の一人――坂本雄二だった。
「ん?ああ、悪いね。ゴリラかと思って一瞬驚いたよ。まさか底辺クラスには喋るゴリラまで居るのかと」
「お前……ケンカ売ってんだな?そうなんだろ!?」
「くくっ、朝から元気だねぇ本当。どうやったらそんなに育つんだろうね。やっぱりバナナ?」
「……はあ。お前はいつも通りだな……」
肩をすくめてため息を吐き、呆れたように呟く雄二。今までと変わらずの光景がそこにはあった。なんだか無性に懐かしく感じる。教室が変わったからだろうか。
「当たり前じゃないか。俺がそう簡単に変わるとでも思っているのかい?それなら君は小学生の時から今まで、俺の事は何も分かっていなかった様だねぇ」
「分かってたっての。一応の確認だ。つか、お前なんでFクラスに居るんだ?お前ならAも狙えただろ?」
「これは去年の自己紹介の時にも言った気がするけど、俺は俺が関わっていて面白いと感じる奴らと一緒にいたいんだよ。その点、Fクラスは何かとありそうだからねぇ。一番興味深かったからさ」
すると雄二はだろうなという視線を俺に向けてきた。
訊かなくともなんとなく分かっていたらしい。
そしてそろそろ自分の席に座ろうと思ったところで、扉が勢いよく開かれた。
「すいません、ちょっと遅れちゃいましたっ」
愛嬌たっぷりにそう言い放つ、これまた俺の友人の一人、馬鹿さが表に出てきたとしか思えない顔をした男――吉井明久だ。
「早く座れ、このウジ虫野郎」
「ようこそ最底辺クラスの最底辺」
俺と雄二は
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