第二十五章
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いたと言われている巨大なラビリンス。そこには多くの少年少女が送り込まれ二度と帰ることはなかった。中に牛の頭を持つ怪物ミノタウロスがおりそれに食い殺されていったからである。牛が人を食う、思えば実に不思議な話であった。そこにはラビリンスのあったクレタ島の牛への信仰があったと言われている。多くの文化でそうであったように農業に使う牛は信仰の対象であったのである。これが変化してミノタウロスという怪物になったと言われている。おそらく食い殺された少年少女は生贄であろう。これは中近東にも似た信仰がある。ミノタウロスに酷似した牛の頭を持つ神々への生贄を捧げる信仰のことだ。聖書ではこれはモロクという魔王になる。牛の頭を持ち生贄の子供達を炎の中で食い殺す魔王である。言うまでもなくミノタウロス等の古代の牛頭の神への信仰が聖書で悪魔化されたものである。こうしたことは教会においては多い。
「私達がミノタウロスなのですよ」
「貴方はミノタウロスというには少し優男ではないでしょうか」
アンジェレッタは速水のそのスマートな長身を見て述べた。
「ミノタウロスが筋骨隆々の身体を持っているからですか」
「そうです。優男のミノタウロスなぞ聞いたことがありません」
「では貴女は」
「私は猫です」
猫の瞳のことは自分自身が最もよくわかっていた。
「生憎牛ではありませんよ」
「ではミノタウロスというのは下げます」
「いえ、それはそれで中々面白いです」
「御気に召されたのですか?」
「そこまでは至りませんが」
言葉をはっきりさせない。まるで楽しむかのように。アンジェレッタは今速水との話を楽しむ一人の女になっていた。その証拠にその猫の目が笑っていた。
「迷路の中の魔物ですか」
「それは変わりません」
「では魔物でいいです」
それは認めた。自分でも笑って。
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