第百二話
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ッ!?」
「もうすぐ砂浜に上陸しようとしていますぞ主」
「太鼓鳴らせェッ!! 撃ちぃ方始めェッ!!」
指揮所の側にあった太鼓が鳴らされて攻撃が開始された。
「撃ェッ!!」
四斤山砲の砲弾が接近してくる蜀軍の軍船の側面に命中。喫水線付近に命中したため同船は瞬く間に傾斜し始めた。
「傾斜していきますッ!!」
「まだまだいるぞッ!! 口を動かす暇があるなら手を動かせッ!!」
四斤山砲から次々と砲弾が放たれて軍船に命中していく。しかし、蜀軍は怯む事なく海岸に突き進もうとする。
「このままだと海岸に到着するわよ」
「海岸に配備してある四斤山砲隊は後方の第三防衛線へ退避ッ!!」
「蜀軍を上陸させる気なの?」
雪蓮が驚きながら俺にそう聞いてきた。
「あぁ。海岸を蜀の血に染めてやるよ」
海岸は丸太で防御した防衛線が三重もあり、四斤山砲隊は最後の三重目まで退避させた。
「高台にいる四斤山砲隊は向こう岸の蜀軍を砲撃せよ」
「心理状態を惑わせるわけね」
「あぁ、恐らく北郷は軍船におらず向こう岸の蜀軍陣地にいるだろうからな」
高台には長砲身に製造された四斤野砲が八門あり、八門は対岸の蜀軍陣地の砲撃を始めた。
「はわわわ、御主人様。攻撃してきました」
「王双め、長距離砲をも製造していたのか」
砲弾が砂浜に命中して砂が巻き上がり、兵士を巻き込むのを北郷は悔しそうに見ていた。
「旗は置いておいて一時退避だッ!!」
「退避ですか?」
「旗があれば愛紗達も安心するだろ。指揮官がやられたら軍は終わりなんだ」
「はわわわ、判りました」
そして北郷達は五里ほど後退した。軍船にいる関羽達は砲撃に気付きながらも退避しない北郷に感激していた。
「攻撃されているのに退避しないとは……流石御主人様だ。我々も負けてはおれんぞッ!!」
北郷からの退避(旗を置いているため退避しているとは気付いていない)はまさかの蜀軍の士気を上げてしまった。
「進めェッ!! 遮蔽物に身を隠しながら敵仲軍を攻撃せよッ!!」
蜀軍は楯や破壊された小舟、四斤山砲が擬装されてた場所に身を屈めて少しずつ兵力を海岸に吐き出していた。
「……向こうの士気が上がっている。予想外だな」
俺は戦況を見ながらそう呟いた。北郷に一杯食わされたか?
「長門ッ!! このままだと第一防衛線が突破されるわよッ!!」
雪蓮がそう報告してきた。やはり兵力の差だな……。
「……最悪の場合は……」
撤退するしかないな。
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