妹みたいな、妹では無かった娘
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初めて彼女に会ったのは、八歳の時だった。
まだ一歳にもならない赤ん坊だった彼女は、逞しい父親に大切に抱かれて、この村にやってきた。
片田舎の村とは言っても薬を求めて訪れる旅人は多く、閉鎖的な雰囲気は元々無かったし、近くの町の宿の主人の紹介まで持って訪れた父娘とお付きの男性は、村人に快く迎えられ。
そしてその確かな実力と頼れる人柄で、あっという間に村での立場を築いた。
そんな大人の事情が当時まだ子供だった僕に、きちんとわかったわけでは無いけれど。
一番歳の近い子供として引き合わされ、
「ドーラと言うんだ。仲良くして、危ないときには守ってやってくれな」
なんて、子供の自尊心をくすぐってくれるような言い方をされて。
本当は彼女には僕の守りなんて必要無かったんだけど、その時はそんなこともわからなくて。
「ドーラちゃん。僕が、守ってあげるね。よろしくね」
この娘をずっと、僕が守ってあげるんだと。
その意味もわからずに、ただそう思ったんだ。
そうは言ってもまだ赤ん坊の彼女と、すぐに遊べるわけも無く。
それでも、暇を見付けては家にお邪魔して、顔を見せてもらった。
最初から綺麗で可愛い赤ちゃんだったけど、見るたびに可愛くなっているような気がして。
いつまで見ても飽きなくて、遅くまで入り浸って母親に怒られて、連れ戻されるのが常だった。
それから、少しずつ自分で動けるようになっていくのを、近くでずっと。
妹の成長を見守るように、本当に近くで。
時には手を差し出して助けたつもりになったりもしながら、ずっと、見守っていた。
彼女は本当に、どんどん可愛くなっていった。
村の大人たちも、将来は絶対に美人になると、いつも言い合っていた。
彼女も僕を、おにいちゃんなんて呼んで慕ってくれて。
家族以外では僕が一番彼女の側にいて、ずっとそんな日が続くんだと。
そう、思っていたのに。
六歳の誕生日を迎えたあたりから、父親の旅に着いて村を離れることも多くなった彼女だったけど、それはあくまで一時的なことで。
あの時も、きっとすぐに戻ってくるんだろうと。
サンチョさんからもそう聞いていたし、村の誰もが、きっと本人たちだってそう思っていただろう。
少しは心配だったけど、あの強いお父さんと一緒なんだから何も心配いらないと暢気に待ってた僕らに、その報せは告げられた。
隣国の王子の誘拐事件に巻き込まれて、彼女も、彼女の父親も。
生存は、絶望的。
まさか、と思った。
あのパパスさんが付いていて、あんなに小さくて可愛いのにしっかりもしている彼女が、まさか、と。
でも遺品としてサンチョさんに渡されたケープは、確かに彼女が身に着けていた
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