第三十二話 待っていたぞ、お前が来るのを
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友だろう」
「ああ、そうだな」
フェルナー大佐が司令長官に近付いた。艦隊司令官達の後ろをゆっくりと歩く。
「その友人の館を襲ったのは卿だな」
この男が、あの時の……。司令長官の発言に会議室がどよめいた。彼の傍にいたケンプ、ワーレン提督が素早く立ち上がりフェルナー大佐を取り押えようとしたが司令長官が“その必要はない”と言って止めた。ケンプ、ワーレン提督が不満そうな表情を見せたが再度司令長官が“その必要はない”と言うと不承不承引き下がった。
「分かっていたのか……」
大佐が苦笑を浮かべると司令長官が声を上げて笑った。
「あんな突拍子も無い事をする人間はそうそう居ない。それに撤退を決めた状況判断の速さ、撤退の鮮やかさ、卿だと分かったよ」
そうか、司令長官は心当たりが有るような口振りだったがそういう事だったのか……。フェルナー大佐が司令長官の前に立った。
「余り褒められても嬉しくないな、失敗したのだから」
口調が苦い。
「その所為でブラウンシュバイク公からも切り捨てられた。ここに来たのは私の部下になる事を決めた、そうだな」
また、皆がどよめいた。
「ああ、そうだ。……元帥閣下、小官のヴァレンシュタイン元帥府への入府をお許し頂きたいと思います」
フェルナー大佐が姿勢を正して許可を願った。受け入れるのだろうか? 司令長官は笑みを浮かべている。
「フェルナー大佐の入府を心から歓迎する。……言っただろう、卿を待っていたと。私には卿の協力が必要だ」
会議室に三度どよめきが起きた。親友とはいえ自分を襲った人間を受け入れた事に驚いているのだろう。或いは協力が必要だと言っているから高い評価に対してだろうか……。
「ただ二つ守って欲しい事が有る。私に嘘を吐かない事、私に隠し事をしない事だ。守れるか?」
「その覚悟を決めたから此処へ来ました。それで遅くなったのです」
司令長官が頷いている。妙な言葉だ、何か有るのだろうか。
「では、例の件を話してもらえるな」
「ベーネミュンデ侯爵夫人の一件ですね、お話します」
ベーネミュンデ侯爵夫人の一件? ではあれはブラウンシュバイク公が関与しているのか……。会議室がざわめいた。皆が顔を見合わせ口々に言葉を発している。
司令長官が手を上げてざわめきを止めた。
「後で話してもらおう」
司令長官が立ち上がった。それを見て皆が立ち上がった。
「これより勅命を奉じブラウンシュバイク公を首魁とする国賊を討伐する。全軍出撃せよ!」
全員が一斉に敬礼で答えた。
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