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銀河英雄伝説〜悪夢編
第三十二話 待っていたぞ、お前が来るのを
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てこうして時間を作ってくれているの、少しはあの人に感謝しなさい」
「……それは、まあ」
不承不承だ、到底感謝しているようには見えない。
「貴方達、今夜もあの人を守るんじゃなく私を守るために仕事をしたの?」
「いや、そんなことは……」
図星ね、溜息が出た。

「全部分かっているわよ、あの人は。笑っていたわ、とっても恥ずかしかった」
「……」
「ちゃんとあの人に敬意を払いなさい。貴方達にとっては上官なのよ。それにラインハルト、貴方にとっては義理のお兄さんになるの」
義理のお兄さん、その言葉にラインハルトが目を瞑って身体を硬くした。前途多難だわ……。



帝国暦 488年 3月 15日  オーディン  ヴァレンシュタイン元帥府  ラインハルト・フォン・ミューゼル



「閣下、そろそろ宜しいのではないかと」
メックリンガー総参謀長が遠慮がちに問いかけると
「……もう少し待ちましょう」
とヴァレンシュタイン司令長官が答えた。その瞬間、元帥府の会議室の彼方此方から小さな溜息が漏れた。これで何度目だろう……。

会議室には正規艦隊の司令官、そして総司令部の要員が詰めている。ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯がオーディンを抜け出し自領に戻った。そして帝国政府は正式に彼らを国賊と断定し宇宙艦隊に討伐の勅命を下した。既に出撃の準備は整っている。後は司令長官が出撃を命じるだけだ。しかし司令長官は未だ出撃を命じない、何かを待っている。

皆、じっと座って待っている。普通ならもっと出撃を主張する人間が出ても良い。だがそれをする人間は居ない。皆黙って司令長官から出撃命令が出るのを待っている。息苦しい程の緊張が会議室に満ちている。一体司令長官は何を待っているのか……。

五分、十分、十五分が過ぎた時だった。会議室に事務局から連絡が入った。スクリーンに事務局長のオーベルシュタイン准将が映る。
『元帥閣下、アントン・フェルナー大佐が元帥閣下との面会を望んでおります。如何致しますか?』
「こちらへ通してください」
司令長官が答えると皆が顔を見合わせた。俺だけじゃない、多分皆が思っただろう、彼を待っていたのかと、フェルナー大佐とは何者かと……。

五分ほどするとフェルナー大佐が会議室に現れた。未だ若い、大佐という事はかなり有能なのだろう。彼が現れると司令長官が嬉しそうに笑みを浮かべた。
「遅いぞ、アントン。卿を待っていて出撃を延ばしていたんだ。皆を大分苛立たせてしまった」
司令長官の言葉にフェルナー大佐はちょっと驚いたような表情をして会議室を見渡したが直ぐに不敵ともいえる笑みを浮かべた。かなり胆力のある男らしい。

「それは悪い事をした。待っていてくれたのか、もっと早く来ればよかったな」
「こっちへ来いよ、私達は親
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