第三十二話 待っていたぞ、お前が来るのを
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「不本意だろうな、私を守る事は。今頃あの二人はお前を守るためだと懸命に自らに言い聞かせているだろう」
「そんな事は……」
「無いと思うか?」
そう言うと夫は軽く笑い声を上げまた視線を窓の外に向けた。
無いとは思わない、多分夫の言う通りだろう。恥ずかしくて思わず顔を伏せた。
「アンネローゼ、これは内乱の始まりだ」
「はい」
「鎮圧にはかなりの時間がかかる、……健康には注意しなさい」
「はい、貴方も御身体には気を付けてください」
「そうだな、……気を付けよう」
夫は窓の外から視線を外さない。でも私を気遣ってくれているのが分かった。
ドアをノックする音がしてラインハルトとジークが部屋に入って来た。夫が窓から離れ二人に近付くとラインハルトとジークが姿勢を正した。
「御苦労です、襲撃者の捕殺は出来ましたか?」
「申し訳ありません。……その前に撤退しました」
ラインハルトが口惜しげに表情を歪めた。でも夫は弟を叱責しなかった。
「撤退したか……、相変わらず状況判断が早いな」
相変らず? 声に楽しそうな響きが有った。先程“誰が来たかは想像が付く”と言っていたのを思い出した。夫は誰が襲撃者なのか想像が付いたのだろう。ラインハルトとジークが訝しげな表情をしている。
「閣下、襲撃者に心当たりが御有りなのですか?」
ラインハルトが問い掛けたが夫はそれに答えなかった。
「私は元帥府に行きます、地上車と護衛を手配してください」
「はっ、直ちに」
「アンネローゼ、コーヒーでも出して二人を労ってくれ」
二人が遠慮しようとすると夫は“次にゆっくり話せるのは随分と先の事になる、遠慮はいらない”と言って遮った。
夫が元帥府に向かった後、二人を居間に通してコーヒーを出した。今夜の事を感謝した後、以前から気になっていたことを訊いてみた。
「どうかしら、元帥府に入って。周りの人と上手くやっているの?」
「ええ、まあ」
頼りない返事だけど表情に曇りは無い。取りあえず問題無くやっているのだろう。ラインハルトは皇帝の寵姫の弟から元帥の義弟になった。その事が二人にどう影響するかが不安だったけど特に問題は無いようだ。夫はこの二人を特別扱いはしていないのだろう。
「仕事は如何、楽しい?」
私が問い掛けるとラインハルトがちょっと不満そうな表情を見せた。
「出来れば艦隊を指揮したかったです。幕僚勤務はどうも窮屈で……」
「我儘を言わないの、貴方のためなのよ」
私がそう言うと弟もジークもキョトンとした表情を見せた。
「艦隊指揮ばかりしているからこの辺りで幕僚勤務を経験させた方が貴方のためになる、そうあの人が言ったの」
もう一度“貴方のためなのよ”と言うと二人が顔を見合わせてバツの悪そうな表情をした。
「今夜だっ
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