第二十四章
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第二十四章
「ロンドンにあるお店はどれも」
「そうですか。やはり」
「ロンドンっ子が行く店はまず駄目です。それよりは」
「はい」
「他の国の料理の店ですよ。ロンドンには多くの国からの料理人が来ていますからね」
「そうですね」
栄えるところに人は来る。かって大英帝国の首都であったロンドンもそれは同じだ。あの街には世界中から人が来ていた。その中には多くの料理人が存在しているのである。本当ならばそれで一大料理文化が誕生する筈なのであった。だがそうはならないところがイギリスなのだ。どういうわけかはわからないがとにかくイギリスという国では食文化は発達しない。長きに渡った繁栄もそれにはあまり関係がなかったようである。
「そうした店はいいのです」
「成程」
「実はアメリカも美味しいものは多いですよ」
「あの国はね」
アンジェレッタもそれはわかった。食通ならばアメリカの食べ物についても知識がある。意外と美味いものが食べられる国なのである。
「意外と」
「ただし」
ここで速水の声の色が変わった。
「カナダは問題外です」
表情までも。曇ったものになっていた。
「問題外とは?」
「イギリス以上です」
「何と」
これにはアンジェレッタも絶句であった。内心まさかと思った。速水の言葉はさらに続く。
「特にパスタがね」
「パスタが!?」
「全然なっていないのですよ、これがまた」
「アルデンテでないと」
「勿論です」
パスタの丁度よい湯で具合である。所謂コシがあるかどうかだ。イタリア料理においては基本中の基本であると言っていいものである。
「それにソースも」
「全く駄目ですか」
「イタリアの方にはお勧めできませんね、少なくとも」
「左様ですか」
「ですから私はカナダでは日本料理店だけでした」
彼は述べた。味が変わってはいてもそれでもそれで我慢したのであろう。どうやらそれもまた彼にとってはかなりの拷問であったようだが。
「ふむ」
「ここにも和食のお店はありますよね」
「はい、まあ」
アンジェレッタは気を取り直して答えた。
「そちらはどうでしょうか」
「これは私の予想ですが」
「はい」
「あまり貴方のお口には合わないと思います」
それを聞いて内心やはりと思った。これはアンジェレッタも察していた。
「味付けが本来のものとは違うと」
「まず値段は置いておきますね」
「ええ」
値段はどうしても高くなる。フランス料理が日本で高いのと同じだ。
「どうしても味付けはイタリア人のものになってしまっています」
「成程」
「ですから日本の方にはお勧めできません。事実これは和食ではないと仰る方もおられました」
「やはりそうなりますか」
速水はそこまで聞いて納得したように頷いた。ここでオ
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