五十九 仲介
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その上、糸に連なる鈴の音が反響する。視界がぼやけ、どんどん増えてゆく鏡。
「この音…!?幻術ね!」
逸早く気づいた紅が幻術返しをする。二重三重に増え続けていた鏡の数が元に戻ってゆく。見事幻術を破った紅とアスマだが、今度はがくりと膝が落ちた。
「……ッ!?か、身体が」
バランスを崩し、膝をつく。動かぬ身体より、アスマと紅は次から次へと起こる展開についていけなかった。
決して鏡から伸びる糸や幻術が原因ではない。にも拘らず、身動き出来ない彼らはこの不可解な現象に迂闊な行動は出来ないと悟った。慎重に相手の動きを窺う。
その為、自分達の事で精一杯だった二人は鏡の外にまで気が回らなかった。
警戒心故にこちらへ手を出してこないアスマと紅。彼らを足止めしていた鏡の中の住人はお面を被り直した。
(邪魔はさせない)
決意を胸に、お面の少年――白は眼下の木ノ葉の上忍を見据えた。秘かに鏡の外を見遣る。視線の先ではイタチとサスケが対峙している光景があった。
術で己と同じく鏡に潜り込んでいるキン。そして橋傍の木に潜むドスと香燐の姿を確認し、白は今一度気を引き締める。
実は、最初から鏡は五枚ほど重なって展開していたのだ。五重の内、三重はアスマの【火遁・灰積焼】によって確かに溶かされた。だから罅一つ入ってないのではなく、既に三枚の鏡が犠牲になっているのだ。
しかし最初から一枚の鏡だと思い込んでいるアスマと紅は戸惑ってしまう。その隙を衝いてキンが千本を投擲。千本に繋がれた糸に連なる鈴の音で幻術をかける。同時に鈴の音にドスの音による攻撃を紛れ込ませる。
鈴の音に気を取られていたアスマと紅は、ドスの【響鳴穿】で平衡感覚を奪われたのである。
白は眼前の木ノ葉の上忍二人の顔触れを眺めた。ドスの攻撃で立てない彼らを油断なく見つめる。
彼の役割はアスマと紅の足止め及び二人が再不斬と鬼鮫・イタチとサスケの間に介入しないように見張る事。
(決して邪魔はさせない)
サスケを誘き出した張本人は、兄弟が対峙する橋の方角を気遣わしげに見た。直後、鋭い視線をアスマと紅へ投げる。
鏡から洩れる冷気がより冷やかに立ち昇った。
(ナルトくんの邪魔だけは…)
偶然か必然か。
再会を果たした兄弟の表情は真逆だった。
「うちは…イタチ……」
血の滲むような心の底からの叫び。
久方ぶりの弟の激語に、兄は無表情で答えた。
「久しぶりだな…サスケ」
懐かしい兄の声に、弟は歯軋りした。
自分は夢を見ただけで動揺したのに、目の前の男はどうしてこうも余裕なのか。昔と変わらぬ力の差を見せつけられているようで、どうしよう
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