五十九 仲介
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因はこれか、と内心自身を叱咤して、彼は銜えていた煙草に火をつけた。
「死者が復讐にでもきたのか?墓場にでも行ってみるんだな。カカシがいるかもしれないぜ?ただし、そいつは生きているがな」
思えば、再不斬とて死んでいるはずなのだ。突然すぎて混乱したが、以前波の国における報告をカカシから聞いていたアスマは、紅の一言でようやく思い出した。
ふう〜…と煙を吐き出す。白煙が霧と雑じり、やがて消えてゆくのを目で追いながら、アスマはにやりと口角を上げた。
「だがあいにく、お前さんは幽霊…ってわけじゃなさそうだな」
指に挟んだ煙草の火口がぽっと赤く光る。同時に、鏡の中からぬうっとお面を被った少年が現れた。
「追い忍の仮面……なるほど」
「カカシが一度取り逃がしたのもわかる気がするわね」
抜け忍である再不斬を、追い忍に扮した彼の仲間が連れてゆくのを見送りにしたというカカシの失態。報告書に目を通した時は少々苦笑したものの、今や前言撤回する。
木ノ葉の上忍二人を前にしても、少しも取り乱していない少年。ただの子どもではない、と感嘆しつつ、アスマと紅は瞬時に報告書における彼の情報を思い浮かべた。
「悪いけど、貴方に構ってる暇はないのよっ!」
無言で佇む少年に向かって、紅が先手をとった。クナイを投げる。
だがクナイは吸い込まれるように鏡の中へ消えていった。代わりに、一斉に飛び掛かる数多の千本。
周囲の鏡からの攻撃をアスマと紅は難なくかわした。カカシからの情報が大きいが、鏡全てに映る少年の動きを見切っているのは流石上忍と言える。
「大人を舐めるなよ!」
そう叫ぶや否や、アスマがかちりと奥歯を鳴らした。刹那、包囲していた鏡の上部が爆発する。
先ほどの煙草の煙に、体内のチャクラによる高熱の灰を忍ばせておいたのだ。周りは冷気なので煙はすぐ上へ上がってゆく。その瞬間を狙い、奥歯に仕込んだ火打石で着火。敵の被爆及び包囲網の突破を狙ったのである。
爆発の炎がじりじりと鏡より上空へと舞い上がる。火花と共に降り注ぐ大量の水滴。
ドーム状だった鏡の上部が溶けた事を察して、アスマと紅は跳躍した。砕け散る足元の氷。
しかし次の瞬間、二人の全身は千本で突き刺された。同時に耳朶を打つのは、美妙な鈴の音。
「なにッ!?」
「そちらこそ、あまり子どもを舐めないでください」
跳躍する前と同じ地点に降り立ったアスマと紅は、自らの身体を見下ろした。全身を突き刺す千本は何れも、鈴が連なる糸に繋がれている。
糸の先はアスマの【火遁・灰積焼】により溶けたはずの鏡。
「あれだけの爆発で罅一つ入ってないですって!?」
未だ顕在する鏡に、驚いた紅が目を瞬かせる。先ほど同様、自身を取り巻く鏡の包囲網に彼らは当惑した。
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