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台なのに、火も使えるのですね? では、炒飯とメンマをいただこう」
「はい。 炒飯とメンマですね。 直ぐに作ります」
そう言って、炒飯作りをはじめる店主。 この屋台、普通と違い、かまどが加工されてあり、単体でもしっかりとした料理が作れるようだ。 なかなか考えてあるな。
『これならこの品数も頷けるというものだ』と、菜譜を眺めていて見つけてしまった。 ……酒である。 料理は自慢の腕を振るうのだろうが、酒はなかなかに製造が難しいのであろう。 地元名産の酒、 となっている。 だが、私は見逃さない、店主こだわりの神酒(お一人様一杯まで)とある。 なんだ、この心をくすぐられる名前は。 ふふふ、これは私に飲めということだな?
よろしい、ならば飲んでやろう!!
「御仁、このこだわりの”酒”というのをいただこうか」
ふふふ、神酒などとは呼んでやらんぞ。
「あ〜それは、一杯限りなんですが、いいですかね? それと、代金はいただきますけど……」
「こだわりなのだろう? まぁ、私はちと酒にはうるさいからな。 もし、気に食わなかったら二杯三杯ともらうがいいだろう? 大層な名前をつけているぐらいだしな。 それにしても料金か……、味がわからんのに、一杯で他の酒より割高というのが気になるな」
「あ〜なら、試飲してみます? 舐める程度なら、無料ですけど……」
ニヤリとしてしまったのは仕方がないだろう。 良い酒は、舐めるだけでもその良さがわかってしまうものだ。
私は二つ返事で試飲を試みた。
渡されたのはほんのひと匙。 小さじ一杯程度の酒。
フワッ……
鼻腔をつく香りが、その強烈な印象を伝える。
な、なんだこの酒は!!! 香りだけでこの趙子龍が膝を屈しそうになるだと!!? いけない、理性がこの酒を飲んではいけないと訴えている。 この酒を飲んだら、もう二度と他の酒を飲めなくなると、訴えている!!! しかし、止まらない。 本能がこの酒を飲ませろと、訴え続ける!!! あぁ、だめだ、やめろ、それを口に運んではいけない。 飲んではいけないのに!!!
ゴクッ……
う、う……、うまい、うますぎる!!! 口の中に広がるさらりとしているのに濃厚な味、頭を突き抜けるような芳醇な香り、喉を潤しながら、焼き付けるように滑り落ちるのどごし……。
様々な矛盾を孕みながら、それでいてその全てが調和するといった、摩訶不思議でいて、抜け出せぬ魅惑の味。 まさに神酒。 私はこれから先、この酒以上の酒に出会うことは生涯ないであろうと言い切れる。 舐める程度の量でこれだ。 一杯飲んだらどうなるか……。 怖くもあるが、楽しみでもある。
なんという、素晴らしさ。
「御仁、この酒を一杯もらおう。 そして、金はいくらでも払う
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