第二十二章
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「はい。それにしても」
「何か」
「これ程のものはそうは口にできませんが。パスタからアイスクリームまで」
「イタリアですから」
アンジェレッタの言葉はそれだけであった。しかしそれだけで充分であった。
「食に関しては全てが完璧なのですよ」
「食がですか」
「それにお酒も」
「はい」
速水はまたグラスを手に取った。そしてまたそこにあるワインを見やる。まるで彼を待っているかのようにその紅い輝きをたたえている。
「完璧なのですよ。イタリア人は芸術には完璧を求めるのです」
「芸術には?」
「そう、芸術には」
彼女は語る。
「占術もまた然り」
「では私達は芸術家であると」
「私達だけではありませんよ」
その目が速水の右目を見つめてきた。何かを探るように。
「といいますと」
「イタリア人は皆。そう、恋は芸術なのですから」
そしてさらに述べた。
「今宵は。二人で芸術を語り合いませんか?」
「友は?」
「月夜です」
紅に染まった頬で述べる。それは決して酒だけのものではなかった。
「紅の酒と甘い音楽もまた」
「幕は紫の空」
「赤や青の宝石達が私達を待っていますよ」
夜の世界に誘ってきていた。二人だけの世界に。
「如何ですか?私はよいのですよ」
両肘をテーブルの上につき、手の指を絡み合わせていた。その上に形のよい顎を乗せて彼に問うてきていたのだ。いささか芝居がかった身のこなしであった。
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