決勝戦〜中編〜
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とになるとは。
後世の歴史家からは自分は何と批判されるだろうか。
そう思えば、小さく息を吐き、ヤン・ウェンリーは笑った。
+ + +
「油断しない事も才能だな。あるいは、それすらも予想していたのか」
もはや呆れすらも言葉に乗せて、アレスは呟いた。
当初はV字型であった鶴翼が、現在では中央を厚くしてYの形に変わっている。
いつからそうであったのかは、この際考える事は無駄なことだ。
ただ偶然か必然かはおいて、このまま突っ込めば敵旗艦を破壊する前に勢いを潰されて、包囲されるという現実である。
かといって、急遽進軍を止める事はできない。
中央突破に優れた鋒矢の陣は、防戦にはそぐわなすぎる。
一度後退して陣形を整えるにしては、深く入り過ぎている。
かといって、前に進めば包囲される。
まさに八方ふさがりの現状で、アレスはコンソールにおいた手を止めた。
脳裏によぎる情報全てが、どうしようもないという現実を突きつける。
時間を見れば、十分が経過していた。
一万三千を食い止めたにすれば、まだ持ちこたえた方であろうか。
そうなれば、残すは。
「全軍。斉射三連! 敵中央を突破する」
呟いた言葉、そのままにコンソールに命令を叩きつけた。
+ + +
敵の勢いが増した。
おそらくは幾末を悟り、全艦隊による一斉の砲撃が始まったのだろう。
これまでにない攻勢は、まさに烈火としての名前に偽りはない。
それでもヤン艦隊は冷静に対処した。
厚みを増した中央がアレス艦隊の勢いを受け止め、混乱から回復した左翼と右翼が包囲を強めていく。
前後左右からの攻撃にさらされたアレス艦隊は、数は千を切っていた。
それでも諦めを見せない。
大したものだと驚きを見せながら、ヤンは攻撃を命令しようとして、動きを止めた。
「まずい」
小さく呟いた言葉の直後――ヤン艦隊の右翼が、背後からの攻撃に大きく崩れた。
+ + +
リシャール・テイスティアは、ワイドボーンからの命令を受けて、コンソールにおいた手を止めていた。
動きだそうとした手が、動いてくれない。
頭ではなく、身体が駄目だと告げる、その状況をテイスティアは知っていた。
何かがおかしい。
それを正しく言葉では説明できないが、その事が手を止めている。
コーネリア艦隊が敵一万五千に接触した。
その事は不思議ではない。
敵は全軍を持って、D地点から攻勢を仕掛けたのだろう。
だが……。
「なんで一万五千も」
敵はおそらくは二つに分けていた。
AとBの防御地点を攻めた二千隻とCとDの防御地点を攻めた二千隻だ。
そして、AとDをそれぞれ攻め
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