決勝戦〜中編〜
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攻撃を加えてくる。
そのフォローのために、ヤンも四学年のドナルド・アルドワンも苦労することになる。
いまだに相手を一蹴できない理由の一つであった。
まさに未熟な人間のフォローという、通常のシミュレート訓練では体験できない事をしているわけだが、あえて体験をしたいわけでもない。
それでも兵力差は絶望的であり、このまま攻撃を加えるだけで限界点を迎えた敵は殲滅出来るだろう。
だが、時間がない。
あまり時間をかけ過ぎれば、敵の援軍が到着する。
その前にもう一艦隊ほどは削りたいからね。
ヤン・ウェンリーの頭の中には、最初から敵の本拠地を攻略する目的はなかった。
防御施設への分散攻撃により、敵を分散させ――合流する前に各個撃破する。
ワイドボーンやローバイクなどの本隊を狙う必要もない。
二千隻の艦隊を二つばかりでも撃破すれば、あとは時間切れで勝ちが確定する。
例え汚いと思われようが、それが最善で、何より一番楽な方法だ。
次が来る前までに相手を撃破する必要がある。
そのためにわざわざ偽装艦まで使って、相手を分散させた。
「アルドワン。プランBを」
『了解しました』
+ + +
アレスの眼前で、敵の動きが変わった。
ワイドボーンやコーネリアのように目を開くような、動きではない。
だが、ゆっくりであるが、確実な艦隊の動き。
そこに付け込もうにも、こちらには余剰兵力は存在しない。
ただこちらを切り裂くことを目的にした、動きだった。
それを見る事だけしかできないとはね。
小さく呟きながら、アレスはわずかに入った休憩に指を止めた。
手を休めながら、見守る画面で映るのは英語のVの形。
即ち。
「鶴翼か」
呟いた言葉の先で、相手の陣系が鶴のように大きく広がっていく。
相手を包囲殲滅するに適している形だ。
もっとも中央が薄いため、中央突破にも横からの攻撃にも弱い。
だが、相手がアレスしかいない今では十分な形であろう。
正面だけではなく、左右からも攻撃を加えるようだ。
そこに驚くような戦術は存在しない。
実に手堅く、アレスを食い破る。
調子に乗ってくれればいいものをと、アレスは思う。
奇策を得意としながらも、根本では確実に必勝の態勢を取る。
厄介で、実に嫌な相手だ。
相手が確実な手を使うのならば、こちらも確実な手を使わざるを得ない。
そして、計算の先には援軍が来るまでに壊滅するだろうとの結果だ。
時間を見れば、開戦からまだ五分ほどしか経過していない。
まだまだ援軍が来るまでに、時間はかかるだろう。
何もしなければ負ける。
だが、見逃しの三振より空振りの三振の方がマシだろう。
呟き、
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