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トワノクウ
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第二十三夜 長閑(二)
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 くうが菖蒲と会談している間に、露草は外で平八から、自分が昏睡したあとの次第を尋ねた。

「おめえが助かるって天狗の旦那に聞いてから、よーやく手前の生活の当てがねえって思い当ってなあ。参った参った。俺ひとりなら浮草でもどうにかなったんだが、芹が一緒だったかんな」
「芹連れて逃げたあの時点でもう根なし草確定してただろうが」

 芹が年頃だったらば立派なかけおちだった。それくらい、芹の村から来た猟師組から芹を庇って逃げる平八は様になっていた――本人には絶対言わないが。

 ちなみに『芹』は彼女の本名ではない。彼女の名は異国の発音で平八には聞き取れず、聴こえる音だけつないで『芹』としたという。

「天狗の旦那がここに行けって言うからよ、芹ともども若先生に世話になることになってな。ここで色々と手伝わせてもらってる」

 梵天が、というのが意外だった。あれでそこそこ気は回る男だが。

 考える間にも平八はこの一年で自分の生活がどれだけ劇的に変わったかを語る。学童のひとりひとりや、学校という場での仕事への新鮮さ。そして、菖蒲の人柄の良さ。

「いやー、いい人に巡り会えたもんだぜ。若いのに学もあって物腰もなめらかで、いかにもいいとこの坊ちゃんみてえな感じなのに、威張るでもへりくだるでもねえ。あんな人はそうそういねえぞ」

 どうやら菖蒲の毒気も平八には勝てなかった模様だ。
 無理もない。平八といると無駄に棘や牙を忘れてしまう。相手に怒ることを馬鹿らしく思わせる平八の気質は一種の才能だ。

 平八が知る以前の、鶴梅を喪ったばかりの菖蒲がどれだけ荒れていたかを見せてやれないのが残念だ。あの頃の菖蒲と来たら、梵天にすら愛想の一つもできずに邪険にふり払うばかり。よくぞあの梵天にあそこまでできた、と今では褒めてやりたい。

「Heihachi!!」

 ちょうどよく異人の娘が来て平八の腕にぶら下がった。

「Cosa posso fare per Lei? Io sono contento per venire. Miseria」

 芹は異国語ではしゃぐと、露草にも突進してきた。

 迷惑なことに、芹は会った当初から露草にべったり懐いていた。ひっつくなら平八だけにしろ、と怒鳴っても、言葉が通じず逆に芹に涙ぐまれる始末。今では放置を決め込んでいる。

「Gi? fa il corpo migliorato?」
「だから分かんねえっつーの」

 おおかた授業が終わって学童たちと遊びもせずにこちらに来たのだろう。特徴的な金髪緑眼は学童たちに混じることなく浮いている。虫の好かない兄≠否応なく思い出させる色だが、芹本人が悪いのではない、と露草は己に言い聞かせた。平八が守ると決めたものを邪険にはできない。

「Ci
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