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占術師速水丈太郎  ローマの少女
第十八章

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第十八章

「これで安心です」
「便利ですね、その力」
「まあ多用はできませんがね。かなりの力を持っていますので」
「それをどうして今」
「この程度ならいいのですよl
 速水は言う。
「力もそれ程使いませんし」
「そうなのですか」
「ただね」
 ここで言葉が変わった。微妙にではあるが。
「やはり使う機会を選びます」
「ですか」
「はい。これは私にとって最大の切り札なのですよ」
「切り札」
「トランプで言うならばジョーカーです」
 彼はまた言う。
「ジョーカーですか」
「そう。滅多には切れません」
「それ程までですか。貴方にとっては」
「けれどまあ蚊は嫌なので少しは」
 うっすらと笑って述べた。そのスーツとコートを以ってしても彼の蚊に対する警戒の役には立ってはいないようである。
「これで帰りますか」
「署にですか」
「他に帰るといいましても」
「私の屋敷がありますよ」
「貴女の!?」
 速水はそれを聞いて少し驚いたような声をあげた。
「はい、宜しければ泊まっていかれますか」
「ですがそれは」
「何、貴方が安心出来る方なのはわかっておられます」
 それどころか自分に対して興味がないのがかえって嫌ですらあった。女心とは実に複雑なものである。速水もそれはわかっているがここは彼の主義が優先されたのである。
「警察には私からお話しておきます」
「そうですか」
「では。あっ、私です」 
 アンジェレッタは早速携帯電話で話をはじめた。こうした時の動きが異様に速いと思った。どうやらこうしたことに関してはイタリアでは男だけではないようである。
「そういうことで、はい」
 話は順調に進んでいるようであった。
「わかりました。それではそういうことで。お願いします」
 話は終わった。携帯を収めるとにこやかな顔を速水に向けて来た。
「では行きますか」
「貴女の屋敷に」
「イタリア人が凝るのはサッカーや異性だけではありません」
「家にもですか」
「はい、それをお見せ致しましょう」
 どうやら自分の屋敷にかなりの自身があるようである。やはりそれだけの名家に生まれ、そこで暮らしているということであろうか。
「宜しいでしょうか」
「はい。それに」
「わかっていますよ」
 アンジェレッタは微笑んだ。
「かなり遅いですが夕食ですね」
「はい」
「それは言うまでもありません」
 アンジェレッタの自身はそこにもあった。
「期待していますので」
「お任せ下さい、そちらも」
「ええ」
 こうして速水はアンジェレッタに案内され彼女の屋敷に案内されたのであった。洒落た外見のイタリアの車に乗ってローマの郊外に出て暫くするとすぐに豪奢な屋敷が姿を現わした。

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