暁 〜小説投稿サイト〜
久遠の神話
第五十二話 重力の剣その十

[8]前話 [2]次話
「それがいいかしら」
「そうだね。あれが基本だからね」
「いいわよね」
「いいと思うよ」
 実際にこう答える樹里だった。
「そのオムレツでね」
「それじゃあ作るわね」
「オムレツは洋食の基本だからな」72
 中田も笑顔で言ってくる。もうそのフライパンでオムレツを作りはじめている。
「作れば作るだけいいさ」
「作れば、ですか」
「料理も経験だろ」
「はい」
 作っているからこそ頷けることだった。
「本当に何度も作ってこそですよね」
「オムレツは特にそうなんだよ」
「基本だからですか」
「中華料理の炒飯と一緒だよ」
 中華料理の基本はよく言われていることだがこれになる。これが出来ていなくては他の料理も出来ないとさえ言われる程だ。
「だからな」
「オムレツもですね」
「やればいいさ、どんどんな」
「はい、じゃあ上城君」
 樹里はまた上城に顔を向けて言う。
「宜しくお願いするわね」
「うん、それじゃあ」
 上城も頷く。こうしてだった。
 二人でオムレツを作って食べる約束をした。中田はその二人を見ながら優しい笑顔でこう言ったのだった。
「やっぱりいいものだよな」
「僕達がですか?」
「そうなんですか」
「ああ、付き合ってるっていいよな」
 こう言うのだ。
「青春っていうのかな」
「青春、ですか」
「ああ、俺の青春はな」
 中田が笑って言おうとすると樹里が突っ込みを入れた。
「今ですよね」
「今か」
「はい、今ですよね」
 こう笑顔で言ったのである。
「それは」
「大学生でもか」
「年齢はまあ。ぎりぎりですけれど」
「今も青春か」
「私はそう思いますけれど」
「そうなるんだな。それじゃあな」
 中田は樹里のその言葉にこの言葉で返した。
「楽しむか、これからも」
「青春をですね」
「戦いはあるしな」
 それにだった。中田は二人にも言っていない彼の家族のことも思い出した、そのうえでの今の言葉だった。
「それでも楽しむか」
「それがいいと思います」
「そうだよな」
 こうした話をして自分もテーブルでオムレツを食べる、そして言うのだった。
「やっぱりこのオムレツは美味いな」
「ですね。ハンバーグを入れたオムレツですか」
「いいものですね」
 二人で笑顔で話してそうしてだった。
 今は三人で楽しむ、そして今度は二人でも楽しむことも約束した。


第五十二話   完


                            2012・12・3
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ