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占術師速水丈太郎  ローマの少女
第十三章

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第十三章

「法皇ですか」
「法皇!?」
「これは少しわかりませんね。カードが何を表わしているのか。いや」
 ここでふと思った。
「バチカンですかね」
「バチカン」
「ここにありますからね。そして教皇もおわします」
「ええ」
「それでしょうか。だとするなら」
 彼は考える顔になった。
「何か方法があるかも知れませんね」
「ちょっと私にもわかりかねますが」
「私も今はおぼろげです」
 速水もこう返した。
「これをどうつなげていくかは」
「左様ですか」
「そして最後ですが」
 過去のカードの下に置かれていた最後の一枚である。そこにあったのは太陽であった。タロットの十九番目のカードである。正ならばかなりいい意味のカードである。
「終わりはよくなるといったところでしょうか」
「それだけでしょうか」
「さて」
 二人はその太陽を見てどうにもわからないといった顔になっていた。速水にも何かを完全に読み取ることができない稀なケースであったのだ。
「これは私にもわかりません
 速水は最後の太陽のカードを見て答えた。
「太陽と言えば朝ですが」
「はい」
 アンジェレッタはその言葉に頷いた。
「ですが。何なのかはまだわかりませんね」
「そうですね。ですが動かねば」
「ええ」
「次はどうしますか」
 アンジェレッタはまた速水に問うてきた。
「少し考えがあります」
「考え!?」
「はい、あまりいい方法ではありませんが」
 速水は述べた。どうにも浮かない顔であった。
「それでも宜しいでしょうか」
「一体どんなものでしょうか」
「罠を張ります」
「罠!?」
「そうです。彼女をおびき出す為の」
「撒き餌ですか?」
「はい、一つ方法があります」
 彼は言う。その浮かない顔のままで。
「はあ」
「何、別に誰かを犠牲にしようとかは思っていませんよ」
「ですが一体どうやって」
「私に任せて下さい」
 そう言うと隠されている左目が光った。髪の奥から黄金色の光が輝く。
「むっ」
「これを使いますので」
 そしてそれをはじめた。何かがはじまろうとしていたのであった。だがそれがどう転ぶかは。占い師である彼にも完全には読めなくなっていたのであった。


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