雪解けの日
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トールはそう言うと巨大な金色の槌を構えてスリュムに向かって走り出した
先程のスリュムよりは劣るものの、中々の速さで踏み締める衝撃で地面を激しく揺らしながらスリュムに向かって突っ込む
「小汚い神め、よくも儂を謀ってくれたな! その髭面切り離して、アースガルズに送り返してくれようぞ!」
対するスリュムもバトルアックスを振り回し、迎撃する構えだ
顔は今までにないほど憤怒の表情で歪んでいる
ターゲットは完全にトール一択でこちらのことは眼中にあるようだ
「……好機だが、動かないのか?」
笑いをポーカーフェイスで抑えつつ、唖然としている面々を我にかえらせる
爆笑して空中で悶えているユイは見なかったことにしよう
「う、うおおぉぉぉ!!」
目の高さの辺りにキラキラとした線条の残像を残しながら刀を大上段に構えてスリュムに突っ込む
狙っていたドッキリも成功したので、意識を切り替えると剣を構えてクラインの後を追った
トールがスリュムと殴り合い、クラインが完全に八つ当たりのソードスキルを撃ち込む。シノンが放つ炎の矢が空を切り、ユウキとリーファが踊るような剣捌きを見せる
キリトの剛剣がスリュムのレギンスをえぐり、俺の剣がレギンスを抜いて内部に直接ダメージを与える
トールという強力な前衛を得た俺達に、もはやスリュムに反撃の余地などなく、戦闘時間32分24秒にしてHPバーがすべて黒に染まった
「ぬっ、ふっふっふっ……。今は勝ち誇るがよい、小虫どもよ。だがな……アース神族に気を許すと痛い目を見るぞ……彼奴らこそが真の、しん」
無機質な氷へと変わっていく過程で、突然スリュムはニヤニヤと笑いながら何事か言い始めるが、直後に振り下ろされたトールの足によって砕かれ、爆散した
スリュムの消えた辺りを見つめて、一つ鼻を鳴らすとこちらに視線を移した
「…………やれやれ、礼を言うぞ、妖精の剣士たちよ。これで余も、宝を奪われた恥辱をそそぐことができた。……どれ、褒美をやらねばな」
トールは自身の持っていた槌についている宝石を外して、放った
宝石は空中で形を変え、人間サイズの槌になると、なおも呆然としているクラインの手の中に納まった
「雷槌ミョルニル、正しき戦のために使うがよい。では……さらばだ」
トールは手を掲げると、巨大な雷の音とともに視界が真っ白に染まった
そして、それが収まるとそこにはもう見上げるほどの巨躯の神は姿を消していた
「リ、リン! お、お、お………!」
「すまんが日本語で頼む」
我に返ったクラインが盛大に言葉に詰まりながら詰め寄って来た
「おまえ、知ってたなぁ!!」
「主語をつけろ。主語を。あと顔が近い。……トールがフレイヤに化けているというのなら知ってたぞ
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