第十章
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い。ですから捜査は地道なものにならざるを得ません」
「わかりました。では私のカードはいいですね」
「はい」
アンジェレッタは頷いた。
「それでいかれるといいと思います」
「それでは。もうすぐ情報が入って来ると思います」
「こちらはまだかかりそうですね」
二人はそれぞれこう述べ合った。だがここで。
「むっ」
「んっ」
二人は何かを見た。速水はカードから、アンジェレッタは水晶から。それぞれ何かを見たのであった。おそらくそれは同じものである、二人は直感でそれを感じていた。
「遅かったようですね」
「ええ」
顔を見合わせて言い合う。見ればアンジェレッタの水晶にうつ伏せに倒れる一人の男が映っていた。
遠くへ歩き去っていく影が一つ。だがそれはもう追うことが出来ない。今二人はここにいる。どうしようもなかった。
男はローマの電灯に照らされて立っている。照らされたその身体にはやはり影が存在しなかった。アンジェレッタの言葉通りであった。
「成程、確かに」
速水はカードから見せられる遺体の状況を見て呟いた。
「影はありませんね」
「おわかりになられましたか」
「はい、これは面妖な」
速水は述べる。
「影を奪われたか食われたか」
「そこまではわかりませんが」
「確かに影がなくなっています」
「そうですね。事件現場は」
アンジェレッタは述べる。
「テルミニ駅の辺りですね」
「わかりました。では今から」
「行かれるのですね」
「はい、ただここからですと遠いので」
懐から一枚のカードを取り出した。
「これを使いましょう」
「戦車ですか」
速水が取り出したのは戦車のカードであった。勇ましいチャリオットに乗る勇士が描かれている。タロットの七番目のカードである。
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