第十章
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第十章
「それは間違いはありません」
「ですが」
それを受けて言おうとする。
「私に考えがあるのですが」
「いえ、それはなりません」
だがアンジェレッタはそれを否定する。水晶を眺めたまま。
「むっ」
「ローマに結界を張られるというのですね」
「おわかりでしたか」
「はい、私も同じことを考えましたから」
「では」
「ですがそれは不可能なのです」
アンジェレッタは述べる。
「私と貴方の力を使っても。それは無理です」
「無理ですか」
「このローマは長い歴史を持つ街」
まずそれを述べた。言うまでもないことではあったが。
「様々な霊的存在もまた存在しています」
「バチカンだけでなく」
「バチカンはその中でもとりわけ巨大な存在です」
それはすぐにわかることであった。ローマ=カトリック教会の総本山として。その力は絶大なものがあるのである。どれだけ様々な陰謀や腐敗があったとしてもバチカンにはそれと同じだけの聖なるものもまた存在しているのである。聖域でありながら腐敗の温床でもあった場所、それがバチカンなのである。
「その他にも無数の教会やカタコンベ跡」
「ローマ時代の神殿等もまた」
「そういったものがあり、結界を張るのは容易ではないのです」
「我が国の東京や京都と同じですか」
「そうですね」
その言葉に頷いてきた。やはりローマは並大抵の街ではない。この街は神の加護という点においても他の街とは大きく違っていたのだ。
「そちらの街のことは御聞きしています。かなりのものだとか」
「それでも東京も京都も魔が耐えませんがね」
唇と目の端だけに苦笑いを作ってきた。
「残念ながら」
「それはローマも同じでして」
「この少女ですか」
「他にも。色々とあるのですよ」
困ったような苦笑を彼女も浮かべていた。
「何分歴史が長い分陰謀や虐殺、流血が多くて」
「それですか」
「はい。日本で言うと怨霊ですね。その類も多いですし」
「そうしたところも東京や京都と同じですね」
「かなりのものだと聞いています」
「はい、表立っては話せないものまでありますから」
速水は述べた。実は京都は怨霊を恐れた街である。桓武帝が弟である早良親王の霊を恐れられたことから築かれたと言われている。帝の御意志によりこの街は最初から霊を非常に恐れていたのである。
「そこはかなりのものです」
「それはローマも同じでして」
「だからこそ結界は張り難いと」
「バチカンがかなりの結界を敷いてはいるのですがね」
各地にある教会やカタコンベもその一環なのである。バチカンはローマを、そして世界を守るのもまた仕事なのである。それを忘れている時も非常に多いが。
「それでもやはり」
「何千年にも渡る流血の跡は消せませんか」
「は
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