第三十話 地雷女って何処にでもいるよな
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いた、夫はあの事件の事を知っているらしい。ではラインハルトの決闘の事も知っているのかもしれない。
「だとするとブラウンシュバイク公やリッテンハイム侯に付くのは避けた方が良いかもしれない」
「そうですわね」
突き放しているわけではないようだ、早く決断しろという事かしら、それほど時間は無いと。夫なりの好意なのかも。
「ではヴェストパーレ男爵夫人は?」
私が問い掛けると夫はクスクスと笑い始めた。
「男爵夫人が声をかけられないのはどちらも敬遠しているからではないかな、男爵夫人を味方にしたら厄介な事になると。男爵夫人の噂は私も色々と聞いている」
「まあ」
夫が声を上げて笑った。結構人が悪い。
少ししてから今度は夫が話しかけてきた。
「少し遅くなったがミューゼル少将を呼び戻す事にした。今シャンタウ星域の辺りの筈だ、来月初めにはオーディンに戻ってくるだろう」
「……」
「宇宙艦隊司令部の幕僚として務めて貰う」
宇宙艦隊司令部の幕僚……、夫の部下という事だろうか、でも……。
「これまで艦隊指揮官としての経験は有るが幕僚経験は無い筈だ、良い経験になるだろう」
「元帥府にも入るのですか?」
「無理強いはしない、彼が自分で決めれば良い」
夫はサラダを食べている。平静な表情だ。ラインハルトの事をどう思っているのか……。
ラインハルトは夫の事を快くは思っていない。夫もその事は知っているはずだ、夫に対して大分酷い事を言ったらしい、男爵夫人がそう言っていた。ラインハルトが夫に敵意を隠さないのはそれが有るからかもしれない。軍の実力者である夫に嫌われた以上、出世は難しいと思っているのかも……。大丈夫だろうか……。
「貴方、私の事を考えての事なら……」
「勘違いするな、アンネローゼ。ミューゼル少将に力量が有ると思ったから呼び寄せるだけだ。戦場で私の義弟で有る事など何の意味も無い。その事で特別扱いなどしないし周囲にさせるつもりも無い」
「はい」
口調には何の変化も無かった。誰もが夫の事を冷徹と言うけど私もそう思う。感情を露わにした所など見た事が無い。軍人なのだと思った、何万、何十万と将兵が死んでも平然と指揮を執る事を要求される職業。感情等に左右されていては指揮を執る事は出来ないのだろう。大丈夫だろうか、ラインハルトは……。感情を抑えられるだろうか……。
「あの……」
「ミューゼル少将が心配か?」
「はい、出来れば……」
私の言葉を夫が首を振って止めた。
「キルヒアイス少佐も司令部に入れる」
「はい……」
全て想定済みらしい、夫はまた粉ふき芋を食べていた。
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