第三十話 地雷女って何処にでもいるよな
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たかったんだが上からの命令で打ち切られた。疑問に思っていたんだ」
「危険だから関わらせたくなかったんだ」
困った奴らだ、危険だというのに手を出す……。リューネブルクが死んだ事を忘れたのか……。
「反乱軍が攻め込んできた事で皆の関心があの事件から薄れた。皇帝陛下が崩御された事で更にそれが強まった。今では誰もベーネミュンデ侯爵夫人の事を口にもしない。密かに捜査しても誰も気にしなかったよ、あの事件はもう忘れ去られている」
「……そうか」
もう過去の事件か、俺の脚は未だ時々痛むというのに……。
「痛むのか?」
キスリングが痛ましそうな表情をしていた。
「……いや、大丈夫だ」
「そうか、足を擦っているから痛むのかと思った」
「……大丈夫だよ、ギュンター。そんな顔をするな」
あの事件の事を想いだすとどうしても足を擦ってしまうんだ。そしてリューネブルクの事を想いだす……。
「ベーネミュンデ侯爵夫人は自殺じゃない、間違いなく他殺だ」
「そうだろうな、彼女は自殺する様な女じゃない」
俺の言葉にキスリングが頷いた。
「彼女は寝る前に温かいミルクを飲む習慣が有った。それに遅効性の毒を入れたのだろう。多分、彼女は何も分からないまま死んだはずだ」
「楽しい夢を見ながら死んだだろう、羨ましい事だ」
キスリングが肩を竦めた。皮肉を言ったつもりは無い、本心だ。あの女はアンネローゼが死ぬ夢を見ながら死んだはずだ。
「彼女の屋敷の使用人を調べた。事件二ヶ月後、侯爵夫人の傍近くに仕えた侍女が一人、ナイフで刺されて死んでいた。警察は通り魔による犯行と判断している。多分彼女が毒を入れたのだと思う」
「……動機は?」
「男だ」
「男?」
俺が問い返すとキスリングが頷いた。
「彼女には恋人がいたのだがこの男が酷かった。どうにもならない賭博狂いで借金を十万帝国マルク程作っていた」
長い戦争で男が少なくなっている。だからクズみたいな男でも女からは必要とされる、病んでるよな……。
「その男の借金を返すためか……」
「そうだろうな。あの事件の前後、彼はもう直ぐ大金が入る、借金は返せると言っていたらしい」
まともな話じゃない、十万帝国マルクと言えばごく平均的な家庭が得る年収の二倍の金額だ。胡散臭さがプンプン臭う。
「それで?」
「事件の後、彼は借金を返した。しかしその二ヶ月後にナイフで刺し殺されている、女と同時期だ。こちらも通り魔による犯行だと警察は判断している」
キスリングが俺をじっと見ていた。
「有り得ないな、同一人物による口封じだろう」
「ああ、どこかの有力者が手を回したのだと思う、それ以外は考えられない」
警察を意のままに操る有力者、貴族か……。
「大金に味をしめて強請ったかな?」
「そんなところだろう」
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