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弱者の足掻き
二話 「準備。そして移動」
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「何でまた、こんなものを? 親から教えられていたのか?」
「お父さん達からは簡単な基礎しか教えてもらってません。ただ、何かお父さん達の物を持っていたくて……」

自分でも良く出るものだと思いながら言葉を紡ぐ
そんな此方に同情でもしたのか、中を確認して返してくれた

「苦無ならそれほど問題はないか。最低限の知識さえ有ればそう危なくもあるまい。だが、起爆札だけは抜かせてもらう」

中を確認してみると、確かに有った札がなくなっていたがその程度なら問題はない

「イサクさん、中の確認は終わりました 」
「そうか。ならお前達は回収したものを持って先に戻れ。俺はこいつを連れていく」
「了解」

家の中から出てきた人に指示を出し、イサクは此方に荷物を積め直したバックを返し、背を向ける

「親戚の所に行くぞ。着いてこい」






(落ち着いているものだな)

静かに横を歩いている子供のことを伊朔(いさく)は思う
同僚であった彼の親から大人しく素直な子だとは聞いていたが、親の死にさほどの動揺を見せぬイツキの事は、大人しいなどというのとは違うように思える
昨日、墓場の前でのことならばわかる。あの時、この子供の顔に浮かんでいたのは拒絶に似た何か。恐らく、事態を理解できていなかったのだろう。そのための無感情
だが、一晩たった今、この子供は感情を荒れさせてはいない
考えられるのは二つ。未だ理解することを拒んでいるのか、それとも、理解した上で受け入れたのか
前者ならば、時間と共に理解し、苦しむだろう
後者ならば、異常だと言わざるを得ない
聞いた話だと、基礎的な訓練は親から受けていたらしい。その中に精神鍛練でもあったのか
人間の倫理観とは、その根幹となる部分は幼少の時期に養われる。ならば、早い時期からの鍛練は、この少年の精神を、親の死を仕方の無いものだとするようにでも固めたというのか

(儘ならないものだ……)

余りにも早い精神早熟。それが少し残酷にさえ思える
下げていた手をあげ、少年の頭に乗せる
不思議そうに此方を見上げる少年の顔を見ながら、自己満足とも言えることばを吐く

「何か困ったことでも有れば、来い。暇さえあれば力になろう」
(もっとも、そんな暇があればだがな……)





(善意が痛い……)

つい先日、外道とも思える宣言をした自分には突き刺さる言葉だ。大方、両親が死んだのに取り乱さない自分を心配でもしたのだろう。此方の事情を相手が知らず、子供である事を使っている自分としてはその言葉が非常に痛い。なんだろう、無意識に謝りたくなる

「……有り難う、ございます」

だが、利用できるならば利用しよう。この人も中々に優秀だ
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