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占術師速水丈太郎 夜の探し物
第一章
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第一章

                  占術師速水丈太郎 夜の探し物
 仕事を終えてだった。帰路についていた。
「さて」
 黒い髪で顔の左半分を隠した青年である。顔はその髪で左半分がほぼ隠されてしまっている。しかしその顔立ちが整っていることは右半分でもわかる。流麗である。涼しげな切れ長の黒い目に適度な高さの鼻、小さめの形のいい唇に細い顎。どれを取っても整っている。
 その服は白く裏地が赤のコートに青いスーツ、そこに白いシャツが見える。ネクタイは赤であり靴は黒だ。そうして出で立ちの青年だった。
 彼は今夜道を歩いていた。道は人がいないハイウェイの曲がった道だった。彼の右手には岩山があり左手は崖である。崖の下にはさらに同じ様な道がある。彼はそこを一人歩いているのだ。
 そこを歩いているとだった。やがて前に小さな男の子が見えてきた。黒い半ズボンに赤いシャツを着ている。年齢は八つ程度であろうか。その子が必死に何かを探しているのが見えたのだ。
 彼はその男の子を見て声をかけた。その青い夜の白い月明かりの中で。
「どうしたのですか?」
「ちょっと」
 言いながらも彼の方を見ずに探し続けているのだった。
「探してるのがあって」
「探し物ですか」
「うん、けれどないんだ」
 辺りをきょろきょろと探し回りながら彼に応える。しかし彼の方は見ないままだ。
「何処にもね」
「ふむ」
 彼は男の子の言葉を受けてまずはコートの左ポケットに己の左手を入れた。そうしてそのポケットから出してきたものは。
 死神のカードだった。彼はそれを見て納得した顔で頷いたのだった。
「成程。やはりそうですか」
 頷いてからだった。男の子に顔を戻して。再度問うのであった。
「もし」
「どうしたの?」
「探し物でしたら」
 こう男の子に声をかけるのだった。
「私も協力しましょうか」
「協力?」
 その声を聞いて顔を向けてきた。見れば幼い、女の子といっても髪さえ長ければ通用するような。そうした可愛らしい男の子だった。
 その顔を見て速水はまずは無言になった。だがそれをすぐに止めて男の子に言ってきたのである。
 夜の世界は黒くはなかった。むしろ青かった。夜空は青くそこに白い満月がある。月は優しい光で白い岩山や黒がかった青い道や純白のガードレールを照らしその下にある緑と荒い薄茶色の崖も照らしていた。そしてその一番下にある青と銀の海もである。
 その中で男の子の顔を見ながら。彼は言うのであった。
「私でよければ」
「手伝ってくれるの?」
「はい」
 静かに微笑んで男の子に述べるのだった。
「探し物も察しがつきましたので」
「嘘、もうなんだ」
 彼の言葉を聞いて驚いた顔になる男の子だった。
「僕はまだなのに」
「私にはわかったので
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