第百三十八話 羽柴の帰還その七
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「とても。そこまで攻めるとはな」
「信じられぬが」
「具足も大きいだけで重くしかも槍は短い」
「弓矢も粗末じゃったしな」
「刀もなまくらばかりだった」
この辺りが織田家とは全く違っていた、織田家は兵が弱い分だけ具足はかなりよい。そして槍や弓矢もよい、無論刀もだ。
そして何といっても鉄砲だ、これがいいからだ。
「三好の軍勢と比べてもな」
「さらに弱かったな」
「そうじゃ、上方の兵達よりもな」
「朝倉の兵は弱かったぞ」
弱兵の織田家ですらこう言う程だ、とかく朝倉の兵は弱かった。
だがその朝倉は、と聞いてだ。彼等も話すのだ。
「信じられぬ」
「宗滴殿がおられたのか」
「いや、あの方はまだ病と聞く」
「それでは」
宗滴出陣の話はすぐに消された。
「他の者が将か」
「それで猿を追い詰めたといのか」
「朝倉にそこまでの者はおらぬ筈」
「面妖なことじゃ」
「そうじゃな」
信長も話を聞いてこう言った。
「わしもそう思う」
「殿もですか」
「そう思われますか」
「うむ、朝倉の兵は弱い」
信長も実感していた、朝倉の兵達のこのことは。
ただ兵が弱いだけでなく具足は重くそれでいて守りが脆い、槍や刀も短く弓矢も貧弱だ、それに鉄砲も殆どない。
兵の弱さを具足や武具を充実させて補っている織田家とは違う、それで言うのだ。
「宗滴殿でなければどうということはないわ」
「しかしです」
羽柴は信長に対しても言った。
「その兵の強さは」
「相当なものだったのじゃな」
「闇夜の中で姿はよくわかりませんでしたが」
「浅井の兵ではなかったな」
「それは間違いありませぬ」
まず羽柴がこう答える、それにだった。
秀長も兄に続いて無言で頷く、そして七将もだった。
「二万、その数でありましたし」
「朝倉の兵も二万でした」
「しかも長政殿はおられませんでした」
「旗までは闇夜の中で見えませんでしたが」
「しかし闇夜の中でも紺jはなかったです」
浅井の色であるその色もなかったというのだ、紺は闇夜の中に隠れやすいがそれでもわかるものはわかるのだ。
それでだ、七将達も言うのだ。
「間違っても浅井殿の軍ではありませぬ」
「あの兵達はやはり朝倉の兵です」
「そうとしか考えられませぬ」
「浅井の兵でないのなら」
「そうか、ではじゃ」
ここまで聞いてだ、信長は真剣に考える顔になって述べた。
「やはり朝倉に宗滴殿以外に誰か優れた将がいるか」
「朝倉家に宗滴殿の様な方がもう一人ですか」
「いるというのですか」
「そうやもしれぬ」
これが信長の今の見立てだった。
「そうだとすれば容易な相手ではないな」
「ですな、朝倉家も」
「かなり厄介ですな」
「やはり次の戦も十万の兵で攻める
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