トワノクウ
第二十二夜 禁断の知恵の実、ひとつ(四)
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た。目をうずまきにするまで考えても、有効打が出て来ない。
「……………………すみません、分かんないですぅ〜」
がっくり。くうは、くずおれた。ドレスが広がる勢いで。
「そんなに難しく考えなくていいんですよ。要は貴方自身がどういう経緯でその身体になったか思い出せばいいんですから」
はっとする。思い出せば、くうも混じり者だった。すぐに思い当らなかった、すなわち自覚が甘かった己を、くうは恥じた。
「……くうは一度死んで、心を梵天さんの手で鳳に移し替えてもらいました。混じりえない両者が混じるためには、片方……ひょっとして両方が死んで同化しなければならない、ってことですか」
「その通りです。篠ノ女さんは体を、その鳳は心を、それぞれ失っています。別に梵天の助けを介す必要はありません。人と妖が死して、どちらかの体(たい)にどちらかの心が宿る。それが後天的な混じり者の成り立ち、憑き物筋の始まりです」
はー、とくうは感心した。知ってみれば意外とあっけない構造をしている。
「もっとも先に述べた事象が起きる自体まれです。己の意思で起こそうと思ってどうにかなる事態ではありません。やったとて体(たい)も心(しん)も拒絶反応を起こして共倒れが関の山。本気で順応させようとするからには梵天≠フ権能がいる。それが彼が天座に君臨していられる理由です」
「で、でも、菖蒲先生も混じり者……ですよね? 菖蒲先生はどうやって、ていうか、えと、誰の体と同化、したですか?」
「梵天から聞いていないのですか? 私の体(たい)は梵天と露草の養い親のものです」
意味を理解するまでに分単位の時間を要した。
「え、えええ!? じゃ、じゃあ菖蒲先生って、お二人のお父様なんですか!?」
「体だけは、ね。心のほうが優先するので、私個人は彼らを友とその弟、という具合に見ていますが。まあ、たまに白緑の体に引きずられて親の気分にさせられることもないではないです」
「びゃくろく?」
「この体の元の持ち主の名ですよ。あの兄弟の育ての親で、前天座の主、白緑。いきさつは省きますが、私は一度死にかけ、梵天の手によって白緑の体を己の体にすることで生き長らえました。だから私はここにいる。梵天は私にとって友であると同時に恩人なんですよ」
俺が人間を手厚く匿うような妖に見えるかい――前に梵天は言ったのに。
(バリバリ助けてるじゃないですか。しかも銀朱が昔の名前ってことは、この人、敵のトップじゃないですか。梵天さんのうそつき!)
――どこかの空の下、一羽の鳥がくしゃみをした。
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