決勝戦〜前編〜
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ちっぽけな自軍を飲み込むように、敵は速度をあげて向かっている。
接敵まで残り五分。
相手との距離から時間を判断しながら、コーネリアは手に滲んだ汗を拭った。
残り時間を見れば、この戦いが最後の戦いになるだろう。
自陣が殲滅されるか、敵を殲滅するか。
あるいは時間切れとなるか。
どうなるかはわからないが、焦らされるよりは遥かにマシだ。
コーネリアは自分が穏健だと思っていたが、どうもそうではないらしいと考えを改めることになった。
今から死地に飛び込むというのに、恐ろしさよりも先に楽しさが勝っている。
一万五千を相手する事に興奮している。
自分がどこまで戦えるのかを知りたくて。
「鬼ごっこは終わりよ。ヤン・ウェンリー」
小さく呟いた言葉。
だが、ミシェル・コーネリアは理解していなかった。
後に『魔術師ヤン』と呼ばれる男の恐ろしさを。
+ + +
防御施設Dへ反応があって、すぐに指示を出しながら、ワイドボーンとローバイクは合流地点に向かっていた。
急いだとしても、コーネリアが接敵してから二十分後に合流することになる。
それから十分後にテイスティアが、さらに遅れる事十分でアレスが来る。
防御の関係上、戦力の逐次投入という愚を犯すことになるが、それでも第二陣となるワイドボーン達は九千隻で、コーネリアと合わせれば一万を超える。
最悪の事態は避けられたと見るべきか。
「どう思う、ローバイク候補生」
『四十分耐えられるかどうかだと思います』
「ああ。俺も同じ考えだ、ローバイク候補生」
ワイドボーンも頷いた。
四十分後にはアレスが烈火のように敵陣を切り裂くだろう。
それまでにこちらが耐えられれば勝ち。
耐えられなければ、負ける。
単純な戦い。
ちまちまと防衛しているよりはよほど楽だ。
そろそろコーネリアが接敵したころだろうか。
通信のタイムラグが憎らしい。
接敵したとしても、それがわかるのが三分後。
もっと近づけば、タイムラグもなくなるのだろうが。
「魚鱗の陣形を」
『了解』
短い言葉とともに、移動しながらゆっくりと艦列が変化していく。
魚の鱗のように三角形に形作られる。
そこに、悲鳴のようなコーネリアの声が聞こえた。
『敵と接触。敵は二千隻――残りはデコイ。偽装艦です。本命は!』
+ + +
広がった一万三千隻の艦影に、アレス・マクワイルドは息を吐いた。
後悔してもどうしようもなく、ゆっくりと髪をかく。
念には念を入れる。
まだまだアレスはヤン・ウェンリーという人間を甘く見ていたらしい。
おそらく、防御施設Dが発見したのは偽装艦による囮。
動
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