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人鬼―ヒトオニ―
人鬼―ヒトオニ―
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手で目を覆った。

―…シャー…―

…気が動転していて忘れていた。

あの『シャー』という音の事を。

どうやら、その音は風呂場から聞こえるらしい。

純平はあわてて 風呂場へ向かった。


風呂場の戸を開けると、浴槽に永遠とシャワーから水が注がれている光景が目にうつった。

「あーもう、なんだよこれ。出しっぱなしだ…。水道代がもったいないじゃないか…。」

そう呟きながら、シャワーの蛇口をキュッと閉めた。

純平は、ほぅっと安心したように息を吐き、その場を後にしようとした。

…なぜシャワーの蛇口が開いていて、浴槽に水が注がれていたんだ?

そんな疑問が頭の中を駆け巡り、純平は更に混乱した。

…鼓動が早くなる。

目の前がチカチカし始める。

息が荒くなる。

足が震える。

手が震える。



純平は恐る恐る、浴槽を覗き込んだ。

浴槽には、半分より少し少ないぐらい水が張られ、その中には自分のジャージが浸かっていた。

純平は、なんだか首元に寒気を感じた。
寒気と言うよりも、恐怖を感じたと言った方が良いかもしれない。


なぜ、誰が、どうしてこんな事をするのかは解らない。
それゆえに、更に恐怖を感じたのだった。

純平は 慌ててジャージを薄いビニールの袋に入れ、自分の目につかない場所に押し込めた。

まだ、息が上がっている。

ふらりとベッドに座り込み、膝を抱えて縮こまった。

「何なんだよこれ…。」

純平のすぐ耳元で、笑い声が響いた。
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