第一章〜囚われの少女〜
第十四幕『身分違いの恋』
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いかん。考えないようにしよう。騎士は常に、冷静でなくては)
一方レナ姫の方はというと、何やら不穏な表情だった。考えや想いが頭の中を巡り続け、観劇どころではなかった。
あの者は一体、何者? なぜあんな所に幽閉されているの? なぜ私と同じ名を……?
――なぜ? どうして? 髪の色、目の色が違うだけでどうしてあんなにも同じ姿をしているの?
疑問ばかりが頭に浮かぶ。あの者の事、この城の事、この国の事――何もかも疑問だらけだった。
どうすれば、彼女を助け出せるのだろう。呪いの仮面のせいで私の身代わりとなった、哀れな彼女を。
このまま彼女を死なせてしまったら。きっと私は死ぬまで後悔する……いいえ。死んでも死にきれずにこの世を彷徨う事になるかもしれない――きっと彼女だってそうなるわ。私の事を呪うでしょう。今だってそうよ。私は、呪われたって何も可笑しくないもの。
どうすれば、一体どうすれば、彼女の事を助け出せる? ――誰も姫には言わないが、その目元は血色が悪く、きっと暗い色をしていたであろう。暗闇の中でも虚ろな目は冴えており、ただ、遠くの方を見つめていた。
――
物語は進み、ジュリエッタに婚約の話が出たその晩。
「この国の騎士である私と、この国いちばんの麗しき姫。
一体、誰が二人の恋を許しましょう?
どうか、お幸せに」
エリオはジュリエッタに背を向ける。
「私のエリオ。
まるで私はカゴの鳥。
あなたに惹かれてしまうのは、私のわがままだというの?
あなたがカゴから救い出してくれる事を、私は望んではいけないの?」
――ひたすら自分の愛に正直なジュリエッタ。
「ああ、愛しいジュリエッタ様。
私は一国のただ騎士。
あなた様に似つかわしいものではありません。
もう、いっそのこと。
私はあなたの前から去りましょう」
エリオはただ、自分の運命を受け入れようとしているだけだった。
それが己の気持ちを押し殺すことになろうとも。
エリオはジュリエッタとの間に距離を置くように、一歩前へ踏み出す。
「わたくしめのことは、どうかお忘れくださいませ」
張り裂けそうになる胸をジュリエッタから遠ざけるように。
「ああ待って、エリオ。」
ジュリエッタは、去りゆく背中へゆっくりと歩み寄る。
「私はカゴの中を飛び回り、何度もあなたを呼ぶでしょう。
カゴを突き破れないだろうかと、幾度もこの身を傷つけながら」
一国の姫がここまで情熱的に、騎士に対して懇願する。
踏みとどまる兵士の背中に、姫は寄りかかる。
「ああ、私の愛しいエリオ。
どうせ消えるというのなら、せめて私をさらっていって」
しばらくその場から動ぜず立ち尽くしていたが、エリオは振り返る。
「ジュリエッタ姫様……そのようなまでに私
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