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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第19話 「趣味のお時間」
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避けた。すっごいです。
 よくもまあ、あんな動きができるものだと思う。
 生身の格闘戦の動きをMSで再現するなんて、MSも馬鹿に出来たものじゃありませんね。避けられた宰相閣下がほぼ直角の動きを見せ、キルシュバオム少佐に襲い掛かる。
 それを避けるキルシュバオム少佐。

「きゃっ」

 モニターが一つ破壊されました。
 宰相閣下がモニター用の衛星を踏み台にして、攻撃したようです。

「喰らえ」

 練習用のビーム砲が、キルシュバオム少佐に向けられる。
 しかしそれすら、かわされてしまう。
 宰相閣下は確かに速い。動きも機敏です。感覚も良く。操縦技術も確かでした。
 でも、それだけです。
 並み以上ではありますが、一流どころには及びません。
 自分も格闘を学んできたので判ります。
 素質はあっても、経験が無い。練習量も足りない。才能の持ち腐れというところでしょうか?
 三人の動きを見ていると、宰相閣下がMSに乗って、戦場に出たがった理由が理解できます。
 悔しかったのでしょうね。
 皇太子殿下ではなくて、ただのMS乗りのパイロットだったら、かなり活躍できたでしょうに。
 才能はある。
 でもそれを発揮する場所がない。
 立つ事すらできない。
 他の人たちが活躍しているところを、指を咥えて見ていることしかできない。
 ものすごく悔しかったでしょう。
 なまじ才能がある分、悔しさもひとしおのはず。

「だが、宰相閣下を戦場に立たせるなど、できるはずもない」

 レンネンカンプ准将が、しみじみと仰りました。
 そうです。宰相閣下は帝都にあって、帝国の改革をなさってもらうべきお方です。
 戦場になど、立ってもらっては困る。

「お諦めいただくしかない」

 何をとは、レンネンカンプ准将も仰りませんでしたが、仰りたい事は理解できます。
 二百五十億の帝国臣民が望むのは改革。
 決して戦場に立って華々しく活躍する事ではない。

「宰相閣下も分かっておられるでしょう」
「うむ。駄々を捏ねられても、本気で仰っておられない」
「でも時には言いたくなるのでしょうね」
「愚痴を零したいときは、誰にでもあるものだ」

 ■オーディン上空 ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウム■

 うおう。勝てねえ。
 こいつら凄すぎる。ニュータイプかよ。
 感覚が鋭い。
 後ろに目があるって感じ?
 油断も隙もねえな。
 やはり、封印の一つを解くしかない。
 やりたくはなかったが……。
 仕方あるまい。仕方ない。仕方ないのだ。

「いけ。ファンネル」

 この世界、ニュータイプなんぞいないからな。
 サイコフレームもねえし、こんなもの必要ないんだが、男の浪漫。
 その一言であの連
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