ある約束の戦い (前)
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ヴェルゼンハイムとの戦いから二ヶ月程が経過したある日、グレンダンに非常警報が鳴り響いた。汚染獣の襲来が頻繁にあるグレンダンでは珍しい事ではなく、都市民は慌てることもなくいつものように粛々と避難所への道を辿っていった。
だが汚染獣に立ち向かう武芸者の側は常とは異なっていた。集結した者達は王宮付近に留められ外縁部には数人が集められただけだった。
「俺っち達が呼ばれるってことはそんな大物が近づいて来てるってことなんかさ」
そのうちの一人ハイアがそばに浮かぶ念威端子に向けて問いかける。
「いえ、今回皆さんが出撃することはなくて……」
「ん、じゃあここに居ない旦那が出るのかい。旦那が行くなら後詰めの必要なんて無いだろうから俺達がいる意味無いだろ」
エルスマウの答えにトロイアットが会話に加わる。
リンテンスが出撃した際に他の天剣の手が必要になったことはない。
それなのに今ここにいるのはハイア、トロイアット、バーメリンの天剣と元天剣のレイフォンの四人なのだ。
名付きの老性体でも来るのかというグレンダンでも第一級の警戒態勢が敷かれているというのにエルスマウから緊張等といったものは伝わって来ない。また数多の戦場を駆け抜けた武芸者の感覚にも訴えて来るものがないため戸惑いが多くを占めている。
「なんで僕まで……」
そんなことを口に出すのはレイフォン、いきなり「女王命令よ」というだけで天剣でもないのに呼び出されたのだ。それは他の天剣も同じようでバーメリンが「クソ陛下め」と悪態を吐いているのが聞こえる。
「汚染獣が来たのではないんですがグレンダンを守る為で」
「汚染獣がいないのになんでそんなことが起きるのかさ」
ハイアの疑問はそこにいる者達を代表したもので、皆怪訝な顔をしている。
「さしずめ人類最強決定戦、といったところでしょうか」
「「「「はあ?」」」」
思わず四人の声が重なった時、荒野で爆発音と共に凄まじい剄の高まりを感じた。
レヴァンティンとの戦いで壊滅的な被害を受けたグレンダンも二ヶ月が経ち復興も進んでいた。
優先されたのは住居であり外縁部付近にその後も利用される仮設が建ち並び徐々に中心部に向けて復興が進んでいった。無論王宮は別で早くから再建が始まっているが。
そんな低所得者向けとなった外縁部に程近い、集合住宅の一室に二人の男女がいた。
「うっわひど、どうしてこうなんのよ。まだ新築でしょうに」
入り口で仁王立ちするメイド姿の女性に対し、部屋の主たる男はソファで横たわったまま煙草を燻らせていた。
「うるさいぞクソ陛下、余計なお世話だ」
「ホコリも増やさないと我慢ならないの、この大量数字マニアめ」
リンテン
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