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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第一章『セシリア・オルコット』
第十三話『輝く世界へ』
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ず、セシリアは思わず目をつぶって俯く。
その間、3秒に満たない。
だがその数秒が、セシリアにとって数分にも、一時間にも感じられた。
瞬く間の永劫の末、彼女が耳したのは――。
「ああ、別に構わないぜ?」
修夜の、承諾の声が聞こえた。
「ほ、本当ですか!?」
「ああ、俺達はクラスメイトで『仲間』……だからな。呼びやすい様に呼んでもらっても、かまわねぇよ」
穏やかな笑みを、修夜はセシリアに向けていた。
まず感じたのは、花畑に飛び込んだような柔らかく温かい感情。だが向けられた言葉を反芻し、その気持ちもすぐに治まってしまった。
とても嬉しいはずなのに、何故か釈然としない歯がゆさ。届いたはずなのに、掴み損ねたような感触。
その何とも言い難い感覚を、セシリアは身を振るわせて感じていた。
欲しい答えは、得たはずなのだが――。
気付けば、ぎこちなく微笑んでいる自分がいた。
「なら、俺も名前で呼んでもらってもいいかな? 織班さんって呼ばれると、少しこそばゆくてさ……」
ここに来て、一夏もこれ幸いにとセシリアに問いかけた。
よくよく場の雰囲気を察しない男である。
「確かに、お前に『織班さん』って言われる貫禄はないわな」
「ああ、確かにそうだな」
セシリアに対する一夏の頼みに、思わず噴出す修夜と箒。
同時に修夜の軽口に、思わずムッとする一夏。
「うるせー、お前だって『真行寺さん』って呼ばれるイメージじゃないだろ」
「あはは、確かにしゅうやんにもそう言うイメージって無いかもー」
そんな一夏の反論に、本音も笑い出す。
「……ふふ」
そんな風に自然と笑いあう四人に、セシリアはつられて笑ってしまう。
「わかりましたわ。そう言うことなら、一夏さんの事も名前で呼びまわすわね。
篠ノ之さん達の事も、名前で呼んでも構いませんかしら?」
和やかな雰囲気に身を委ね、セシリアはこの際にと、箒と本音に尋ねてみる。
「私は別に構わない」
すんなり“諾”と返す箒。
「私もー」
本音も、セシリアの申し出に二つ返事で返した。
「ふふっ、ありがとうございます」
セシリアの心中に、少しばかりの達成感があった。
「それなら、一夏さん達も呼びやすい呼び方でお願いできませんか?」
「え、良いのか?」
三度驚く一夏と箒と本音。
「ええ。先程、修夜さんもおっしゃったではありませんか。わたくし達はクラスメイトで仲間……なのですから」
一夏の疑問にそう答え、セシリアは手を差し出す。これから共に過ごす仲間達への、信頼の証としての握手をするために。
「……そうだな」
その言葉に納得するように呟き、最初に手を取って握手をしたのは修夜だった。
「あぁ、これからよろしく、セシリア」
真っ直ぐに視線をセシリアに向け、彼女の手を優しくも力強く握った。
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