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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第一章『セシリア・オルコット』
第十二話『宿りし絆(こころ)』
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修夜を見送ったセシリアは、保健医の帰還を待ちながら帰り支度を整えていた。
思い返せば、どこまでも不思議な存在に思える。
突然熱くなったと思えば、すぐさま水鏡のように穏やかになる。
不敵な態度で挑発をしてきたかと思えば、何の躊躇もなくこちらに賛辞を送ってくる。
まるで“風”そのものようだ。
そんな気まぐれで、妙に人情くさい少年が放ったいくつもの言葉の中で、セシリアの心に、ある言葉が強く残っていた。

――【あの時のお前、綺麗でカッコ良かったぜ……?】

(………………)
両親がこの世を去って以来、素直に人から褒められたのは何年振りだろうか。
しかも自分が売ったケンカがもとで決闘を繰り広げた相手に、である。
正直、少女は複雑だった。
今日、自分と矛を交えた相手は、間違いなく今まででも最強の敵だった。
そんな相手は、自分と同じように大切な誰かを喪い、その逆境をバネに夢へと突き進んでいる。
今日だけで、いったい彼といくつの言葉を思いを交わしただろう。
あまりに濃密な一日に、暫し支度の手を止めて振り返る。

――【あの時のお前、綺麗でカッコ良かったぜ……?】

「……!」
不意を突くように、無意識にあの言葉がよみがえる。
同時に、思わず胸が締め付けられる感覚と、脈拍の上昇に襲われる。
(またですわ……)
最初に修夜にこの言葉をかけられたときも、セシリアは同じ症状に見舞われていた。
二度目は、呆けている自分の顔を近くで覗いてきたとき。
そして三度目は、自分を名前(ファーストネーム)で呼びたいと申し出てきたとき。
それ以降はどうにか平静を装って見せたが、内心では修夜が次に何をしてくるか気が気ではなかった。
心臓への締め付けは、急なもので苦しくはある。
しかし、同時に身体の温度が上昇し、少し浮かれているような高揚感も押し寄せてくる。
なんとも、筆舌に尽くしがたい感覚であった。
これは何だろう――。
そう物思いに入りかけた一瞬、セシリアの中で『ある単語』が引っ掛かった。
それをきっかけに、セシリアはかつて読んだ戯曲や小説の言葉から、今の自分に見舞われている症状と同じ現象を思い出す。
(うそ……でしょ……)
確信は無い、だが知識を当てはめていくと、おのずと出る答えは“限られて”しまった。
(い……いいえ、け…決してこれは……?!)
だが、その“心の名前”を否定すべく、セシリアはとっさに自分に言い訳をしてみた。
あれは場の雰囲気にのまれただけだと。弱った自分の心が起こした気の迷いだと。
そもそも、あれだけ忌み嫌っていた“男”という存在に、自分がこれほど簡単に気を許してしまうのはおかしいと。
そして一度、深呼吸をして頭と心を落ち着かせてみる。
それでも、心臓が覚えてしまった“甘い痛み”と、身体が知覚
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