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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第一章『セシリア・オルコット』
第十二話『宿りし絆(こころ)』
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以下は、俺がオルコットから聞いたことだ。

オルコット家は、彼女の祖国イギリスはおろか、近在の西ヨーロッパ諸国でも知られる名門だという。
特に彼女の母親は、オルコット家でも初めてといわれる女性当主の地位を勝ち取り、一門をさらなる発展へと導いた敏腕実業家として活躍したそうだ。
一方で彼女の夫、つまりオルコットの父親は、入り婿で肩身の狭い身分だったらしい。
そもそも彼女の父親は優しいが気弱で、親類どころか使用人にまで舐められていたのだという。それを語る彼女の態度を見るに、扱いのひどさは見ていていたたまれないものだったに違いない。
パワフルな母と弱小な父を見て育ったオルコットは、いつしか力強い母親に羨望の眼差しを向けるようになり、将来は母親のような立派な女性になろうと決めたのだという。
そんなオルコット家に転機が降りかかる。
ISの登場だ。
これにより女尊男卑の風潮が世の中を席巻し、母親はより力を伸ばし、父親はさらに居場所を狭めていったとか。
そんな父親を、オルコットは徐々に避けていくようになった。
同時にオルコットから見て、夫婦の関係も徐々に冷え込んでいったようにも見えたらしい。
それが数年前のある日、二人は突然のようにイギリスの北部・スコットランド地方への小旅行を決定した。
オルコットも、このときは心から驚いたらしい。
二人がどんな顔をして出て行ったかは、はっきり覚えていないらしいが、父親がお土産を約束してくれたことはおぼろげに覚えているというのだ。
しかしながら、オルコットにとって両親を見送ったそのときが、家族三人での最後の時間となった。

スコットランド鉄道特急列車横転事故。
俺もその事故のことは、わずかにだが覚えていた。
スコットランドの南部と北部を結ぶ路線の途中で、走行中の特急列車が横転し、死傷者100名を越す大惨事となった事故だ。
当時この事故は、邦人の被害者も出たとあって日本でも大々的に報道され、最終的にはその年における最大の交通事故として記録されることになった。
事故の原因はいまだ解明されておらず、専門家のあいだでも列車の整備不良説から、レールの異常説、カラスのいたずら説、果ては政府要人や経済界の重役を多く載せた車両が最大の被害を受けたことからテロ説まで、様々な論争を今でも呼んでいる。
オルコットの両親も、この一番被害のひどい車両に乗り合わせていたのだという。

突然の両親の死。
オルコットの胸中がどんなものだったか、想像するのもいたたまれない。
自分の知る人が何も言わなくなる寂しさは、自分にとって身近な人ほど“痛み”を伴ってくる。
俺自身、それは嫌というほど知っている。

だがオルコット曰く、ここからが本当の『戦い』だったのだという。
名門の当主の急死が招くもの、それは身内での醜い『遺
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