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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第一章『セシリア・オルコット』
第十話『強き者(スルーズ)』
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情を硬くして顔を正面に向け、静かに結果を告げた。

「……残念だけど、一夏の不戦勝になったよ」
それは、修夜にとっても口にしたくはない事実だった。
「クラス代表を決める締め切りが差し迫っているから、再試合の日程を組むのも難しいらしくてな……」
その言葉に、セシリアは静かに顔を伏せた。
修夜は自分で自分を罵りたくなった。
なんであんな言葉で励ましたのか、なぜ彼女の異変をもっとしっかり察知できなかったのか。
勝ったことで気を緩め、気づけたかもしれない出来事を見過ごした自分の軽率さに、修夜はどうしようもなく腹が立った。
それでも、そんな思いをしたところでどうしようもないことは、痛いほど分かり切っていた。
「結果として、わたくしはお二人に負けたと言うことになるんですね……」
先に言葉を紡いだのはセシリアだった。
「……オルコット?」
顔を上げた修夜の目に映ったのは、悲しげな笑みを浮かべてうつむく少女だった。
「あれだけの大見得を切っておきながら、あなたには負け、織斑さんとは戦わず……。
 これで代表候補生だなんて、笑ってしまいますわ……」
自嘲的な言葉を並べながら、セシリアはただ下を向いて悲しく微笑んでいた。
修夜は少し、戸惑いを感じた。
最初に見た彼女は、人をあからさまに見下す高飛車で嫌味なお嬢様でしかなかった。
だがお互いに意地を引鉄に載せ、全力でぶつかっていくうちに、彼女が垣間見せたのは確かな強者として意識であった。
そして今度は追い詰めた先で、彼女の本気と勝利に対する強いこだわりをひしひしと感じた。
そんな彼女が戦いの終わりに見せたのは、決して驕り高ぶらない、自分なりの誇りを持つ素直な少女として姿だった。
しかしながら、今の自分の目の前に居るのは、その最後の支えさえ折られて弱っていく、普通の女の子だ。
(……なんなんだよ…)
修夜の中で、哀しみとも憤りとも、仇情けとも違う何かがふつふつこみ上げてくる。
「わたくしなんて……、何も大したことなんて……」
うつむくセシリアの視界は、徐々に滲んでいく。それは自分で自分を傷つけて出てきた、心の流す血のようにもみえる。
少しずつ、膝の上の手がこわばり、シーツがしわを寄せていく。
自分の中にある全てを失った……、セシリアの中で決定的な何かが崩れ去ろうとしていた。
そのときに――

「まだだろ……」
ぽつりと、そんな声が漏れてくるのを聞きとった。
その声にセシリアは、今にも泣き出しそうな顔を上げて、その方向を向く。
「まだだろ、こんなのまだまだ始まったばっかりじゃねぇか……!!」
そこには、強い何かに突き動かされて言葉を紡ぐ修夜がいた。
「……終わったんです、何もかも……」
しかしセシリアには、修夜の紡いだ言葉が理解できない。
自分のクラス代表決定
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