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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第一章『セシリア・オルコット』
第十話『強き者(スルーズ)』
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、主任」
あまりの怒気に思わず萎縮しまい、家族であるはずの相手に敬語になる。
「とりあえずはデビュー戦、お疲れさま。そしておめでとう…!」
そのねぎらいの言葉とともに、画面から目を離して俺に顔を向けてくる拓海。
その笑顔はとても穏やかで、まぶしいぐらい爽やかだった。
そして、長らくコイツと家族である俺は、その経験からすぐさま悟った。

……あ、俺死んだ――。

結局、俺とシルフィは、次の一夏の試合がはじまるまでの十数分間、拓海からの説教を受けることとなった。
「まったく今回は見ていて色々とひやひやしちゃったね。途中でバーニアの起動がおかしいとは思ってたけどまさかそんなことになってったなんて。
 いいよいいよ気にしないで一週間で納品出来てないこっちが悪いんだし。それにしてもリニアライフルも一戦目でこんな感じになるなんて。
 いいよいいよ気にしないでまた技研のみんなと三徹ぐらして死ぬ気で仕上げればすぐ出来るし。これからも気兼ねなく使ってくれないとね。それはそれで……」
爽やかな笑顔と声で、もう死にたくなるような辛辣な箴言(しんげん)が嵐の如く飛んできた。
心にナイフが刺さるのは、師匠で慣れている。だが師匠と拓海のそれは性質が違う。
師匠は急所を目がけての一撃必殺、一方の拓海はワザと急所をずらしてメッタ刺しにしてくる。
一気に核心を突かれるのは確かに痛いが、死んだ魚の眼で空笑いしながら“僕が悪かったんだよ”を連発されるのは拷問である。
ものごとの芯を的確に捉えるセンスに、相手の良心の呵責を最大級に刺激する術が備わると、それはもう立派な殺人手段だ。
懇願したい、もういっそ殺してと……。
とにかく正気を保つため、気を紛れさせるために他の四人をチラ見してみた。
……すると、山田先生は千冬さんにしがみ付いて泣きながら震えてるし、千冬さんは山田先生を宥める声に余裕がないし、一夏と箒は完全に意識を脳内に飛ばして逃げていた。
ISを調整するためのピットルームは、ただ一人の俺の家族の怒気で混沌と化していた……。
――師匠、泣いても…、いいですね……?
『拓海の説教ピットルーム』という地獄の固有結界に、試合準備のアナウンスという福音のラッパが鳴り響く。
それを聞くと拓海は、今度からは気をつけてくれよと、やっぱり死んだ笑顔で爽やかに締めくくった。
そしてそのタイミングを待っていたのか、ピット内の人間は何事もなかったかのように試合の準備に取り掛かる。
もうすぐ試合開始だ。
そう思って、一夏に話しかけようとした矢先に、再びアナウンスが流れる。
それはアレがあの時、俺がオルコットに感じた色々な違和感の正体を暗に示していた。

――セシリア・オルコット、ピットルームにて気絶し、保健室へと搬送。

気付けば、俺はISスーツのまま、
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