第12話「京都―初戦」
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、何かが顔に張り付いた。
それだけなら彼の眠りを妨げるには至らなかっただろうが、それは「ゲコゲコ」と鳴き声をあげながら彼の顔をべたべたと跳ねて回り、タケルの睡眠を見事に邪魔してみせた。
「……!」
頭に飛び乗ろうと跳ねた蛙を空中でキャッチ。
「蛙――」
と考えようとして周囲一帯に無数の蛙が存在していることに気付いた。どう考えても電車内に潜伏できる数じゃない。
――じゃないな、魔法か?
妙に冷静に呟いたかと思えばそのまま握りつぶした。それはそのままポンと音を立てて紙は姿を変えた。
「……下らないことを」
明らかにイラつきながら立ち上がり、便所に向かう。後ろではまだネギや生徒が蛙の騒動で騒いでいるため寝付けそうになかったからだ。
トイレを終え、個室を出る。と、今度は燕。車内を飛び回り、こちらに向かってきていた。タケルは何かを考えたわけではない。疑問にも思ったわけでもない。ほとんど眠っている頭はもちろん働かず、なによりも体が勝手に反応した。
まるで頭でも掻くかのように無造作に、そして自然に振るわれた腕は、次の瞬間にはその燕を握り潰していた。
「……」
手の中でまたもや姿を紙に変えた燕と、燕がくわえていた手紙を近くにいた桜咲刹那に無言で渡す。
「……え、タケル先生?」
困ったような顔をする桜咲は無視し、彼はシートに座った。そのときには既に蛙騒動が終わっていたようで、それに気を良くしたタケルはすぐにまた目を閉じたのだった。
不意に目が覚めた。
「……ここは?」
辺りを見回すが見覚えがない。
「……いや」
すこしづつ意識が覚醒を始めたせいか、ゆっくりと今日の出来事を思い出す。
「そうか、今は京都か」
ほとんど寝ていたせいで記憶はおぼろげだが、なんとなく覚えていた。現在午後の11時過ぎ。消灯時間を過ぎたところだ。
――そういえば風呂に入ってなかったな。
今すぐにでも2度寝したい気分だったが、着替え一つせず眠っていたため汗が気持ち悪い。露天風呂でのんびりを決め込み、外に出る。
「さて……」
ほとんど誰もいない廊下を歩き、ロビーに出たところで数人の生徒が顔を付き合わせていた。
――初日から……か。元気だな。
生徒達の気持ちもわかるが注意は必要だろうと考えて声をかける。
「もう消灯時間だ、ほどほどに……む?」
だが、その中に教師が一人。なぜかタケルの顔を見た瞬間にアスナの後ろに隠れた。その小動物のような行動の意味がわからずに首を傾げる。
「どうしたネギ、俺に何かついてるか?」
いつも通りに声をかけただけだったが、不意にネギから怯えが消え
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