第12話「京都―初戦」
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何を――」
長瀬が反論しようとする前に、女性徒たちが騒ぎ出した。
「「「「愛しのお姫様!?」」」」
「え、何それ? 私知らないよ!?」
「実は……――」
図書館島でタケルが長瀬をお姫様抱っこで抱えて帰ってきたときのことを言っているのだろう。
騒ぎ出す友人たちを尻目に、長瀬が顔を赤らめてガックリと肩を落とす。その肩に竜宮がポンと肩を叩いた。
「……事実はどうでもいいが、可能性があるならやるべきだと思わないか? これほどに殺気だっている大和先生を無理に動かすのは少し勇気が必要だ」
あまりに冷静な、そして長瀬にとっては酷な言葉をさらりと告げる。
「わ、わかっているでござる」
長瀬がタケルに近寄り、緊張に身を震わせる。周囲の生徒やネギも固唾を呑んで見守っている。起きなくて当然、だがもしこれで起きたら――。
そんな修学旅行とは別のドキドキが彼等により一層な緊張を強いる。
「た、タケル殿。そろそろ移動があるので動くでござるよ〜」
「……」
1秒、2秒と経過するが返事ない。
「駄目だったアルか」
「なぜか少し悔しいでござる」
長瀬とクーが呟き、肩を落とす。タケルが動かない分、教師としての仕事を頑張ろうとネギが班の確認のため口を開いた。
「そういえば、長瀬さんはクーさんの班でしたね」
長瀬自身がよくわからない気持ちに首を捻らせていた時だったので、「え?」と聞き返すが、すぐにネギの言葉を思い出したのか笑顔で「あいあい」と頷いた。
「……う」
言葉が漏れた。
全員がサッとタケルに顔を向けた。確かに彼は不機嫌そうに、そして顔を顰めてゆっくりと身じろぎする。
まず、長瀬に顔を向けた。
タケルに目を向けられた理由がわからない長瀬は首を傾げる。
それを見た彼も不思議そうに首を傾げて、ため息を吐いた。
「……ネギ」
「は、はい!」
呼ばれたネギはビクリとその体を恐怖に震わせる。
「移動はまだか?」
「班ごとに点呼して、それから移動ですので、もうすぐです!」
ビシッと直立したまま答える。
「……そうか、悪いが先に行く」
それだけ言ってのそのそと歩き出した。新幹線の中にタケルの姿が消えた途端、誰かが呟いた。
「今のって楓ちゃんの『あいあい』で起きたよね?」
そしてそれは皆が思ったことらしく、口々に騒ぎ始める。
「あ、やっぱり? 私もそう思った!」
「だよね、しかもその後、長瀬さんの顔みたしーー!!」
キャーキャーと騒ぐ女性徒たちに、長瀬は困ったような、それでいて満更でもないような顔を見せるのだった。
新幹線の中、タケルが爆睡している最中
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